研究課題/領域番号 |
15K03252
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
安藤 和宏 東洋大学, 法学部, 教授 (00548159)
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研究分担者 |
今村 哲也 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (70398931)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 衡平な報酬 |
研究実績の概要 |
本研究の具体的な内容は3つの内容から構成されている。まず、(1)音楽配信にかかるレコード保護に関する諸外国の法制度の状況について、文献調査を中心に詳しく調査・整理する。次に、(2)諸外国における音楽配信ビジネスの動向について現地調査を中心に詳しく調査・整理する。最後に、(3)諸外国とわが国の法制度を比較検討し、音楽配信にかかるレコード保護に関する法制度のあり方として、最適なモデルを提案し、課題解決に向けた立法論・解釈論を展開する。第2年度である平成28年度は、諸外国における音楽配信ビジネスの動向について現地調査を中心に詳しく調査・整理し、その成果を公表することとした。そのために以下の計画・方法により研究を実施した。 (a)資料収集・分析:海外の音楽配信ビジネスの動向に関する資料収集を行い、音楽配信ビジネスの現状を整理して、その中で顕在化した問題、特にアメリカで音楽配信ビジネスが急速に発展している点を指摘し、次年度の研究調査の方向性をより明確にした。 (b)海外調査:研究分担者がイギリスで資料収集を行い、その結果を分析・考察した。 (c)中間報告:論文の公表を公開講座等での報告を通して、政策立案や学究活動の議論の糧になるように努めた。具体的には5月14日(土)と21日(土)に東洋大学で公開講座「音楽ビジネスの現状と課題」、11月19日(土)と26日(土)に東洋大学で公開講座「音楽著作権ビジネスの基礎知識」を開催した。さらに音楽著作権ビジネスにおける問題点を大学紀要に論点をまとめて、現在の私見を交えた論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年のデジタル化・ネットワーク化の発展は、大量かつ多様な映像や音楽等のコンテンツの流通を可能としたが、同時にこれらのデジタル・コンテンツの利用をどのように円滑化すべきかという問題が提起されている。とりわけ、権利者が多く効率的な権利処理が困難と言われている実演と、多くのコンテンツに二次利用されるレコードについて、早急な解決策が求められている。この問題に対するアプローチとしては、①裁定制度の導入、②管理事業者を通じた権利の集中処理、③許諾権の報酬請求権化が考えられるが、各アプローチにはそれぞれメリットとデメリットがある。本研究では、音楽配信にかかるレコード保護に関する諸外国の法制度と運用状況を調査・分析した上で、現行制度の改善や新たな提案を行うための総合的研究を行うことを目的としている。具体的には、音楽配信にかかるレコード保護について、(1)諸外国の法制度の状況の調査・分析、(2)諸外国および日本におけるヒアリングを含めた実態調査、(3)デジタル時代に適合した課題解決に向けた法制度の提言を行うことを掲げた。平成28年度は、主として(2)の論点を整理することを目標とした。自己評価としては、公開講座での講演や論文の公表、海外調査によって、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成29年度は、初年度・次年度の文献資料の分析や海外調査により収集した研究成果を踏まえて、(3)デジタル時代に適合した課題解決に向けた立法論・解釈論を展開することが主たる作業となる。以下の計画・分析により、研究を実施する予定である。 (a)資料収集・分析:初年度・次年度に収集した資料の分析を継続して行うとともに、さらに追加的な資料収集を行い、それらの分析を進める。その際、引き続き海外の研究協力者から支援を仰ぐ予定である。 (b)海外調査:研究調査の研究協力者との間で論点に関する意見交換を引き続き行うとともに、海外出張を行い、現地の研究者・実務家から最新の情報収集を行い、かつ、論点に関する議論を行う予定である。 (c)最終報告:最終報告として、2017年5月13日(土)に東京の一橋講堂で行われる著作権法学会研究大会にて「音楽配信ビジネスと著作権制度」というシンポジウムを開催する予定である。研究者は「音楽配信ビジネスと著作権法」というテーマで報告を行い、さらにパネリストとして議論を行う予定である。また、この報告に基づき、東洋法学という紀要で著作隣接権の制度設計に関する論文を公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、アルバイトを使用して資料を収集・整理する機会が予想よりも少なかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、アメリカでの海外研究を実施する予定なので、次年度使用額についてはそれに充てることを予定する。
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