2016年11月の日本法政学会研究大会報告「台湾文化資産にみる財産権と公共利益の交錯-新芳春茶行の古蹟指定を事例として-」につき、学会誌『法政論叢』(第53巻第2号)に論文として掲載し、台湾における文化資産概念の拡充の経緯と民主的手続きの確保によるプロセス的正当化の重要性を提示した。 また5月開催の日本台湾学会では、「台湾の『日式建築』の現在~その意義と機能」と題する分科会に企画者・コメンテーターとして参加し、学際的な領域で近年注目される台湾の有形文化資産につき、建築学、文化人類学、社会学、法律学の視座を重ね合わせることで浮き彫りとなった、観光や商業施設としての利用を媒介としつつ、歴史的アイデンティティに日本を取り込みながら輻輳化され変容を遂げていく台湾文化資産の「かた」の存在という示唆を得た。 8月の現地調査(台北市)では、文化資産の保存における損失補償手段として重要な役割を担う容積移転の現状や歴史的建築物のリノベーションによる活用事例(ホテル、博物館への活用事例等)の視察を行った。 さらに9月には広島陵北ロータリークラブ例会において、「重層化する台湾の有形文化資産について」というテーマで台湾文化資産の活用事例について報告を行い、その概要を同会会報に掲載した。 加えて12月刊行の『広島経済大学研究論集』(第40巻第3号)掲載の「台湾文化資産保存法改正(2016)の概要について」(研究ノート)では、多元文化の尊重、土地の制約に対する損失補償手段の整備、市民参与権の保障、文化政策・文化教育・都市計画・環境保護の総合化等の視点から、文化資産保存法の改正内容についての初歩的な整理を行った。
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