本研究は,自治体職員の意思決定の前提をハーバート・サイモンの意思決定論を参考に明らかにしようと試みたものである。なぜなら,職員の意思決定は,行政の活動や行動の内容を規定するからである。判明した結果は以下の3点である。第1に,自治体職員は,通常業務の中で事業案を決定する場合に,「問題の影響や被害が大きいこと」,「課題対応への緊急性が高いこと」,「事業の成果が見込まれること」を特に重要視している。第2に,意思決定の要因数は3つか5つであり,職位が高いほど,一般職では勤続年数が短いほど,それぞれ要因数が増える傾向にある。第3に,職位が高いほど「トップなどの政治的意向に沿っていること」を重要視しているのに対し,職位が低いほど「予算確保が期待できること」を重要視している。
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