本研究は,各国との比較を通じて日本の議院内閣制を,(1)各国における議院内閣制の根幹制度のバリエーション,(2)日本および各国の近年の制度改革,(3)日本における近年の政治過程におけるアクターの行動変化に注目しながら,理論的・実証的に研究することを試みる. 最終年度は,昨年度に分析を行った西欧議院内閣制諸国と日本,カナダ,ニュージーランド,オーストラリアの政権運営と解散・総選挙に関する比較研究をさらに進め,世界の議院内閣制諸国と比較して,日本では首相の例外的に自由な解散権がデンマークに次いで頻繁に行使されていること,総選挙での勝率がもっとも高く首相が退陣に追い込まれることがもっともまれであること,それにもかかわらず,総選挙以外の時期における退陣がもっとも多いため,近年における首相の平均在任期間は安定した議院内閣制諸国のなかで2番目に短いことなどを明らかにした.この成果を論文としてまとめた. さらに,与党内ガバナンスおよび政府法案への与党支持のバリエーションの問題として,多数主義的民主政治システムである日本における国会運営の比較政治学的特徴をコンセンサス型民主政治システムと対比して分析し,日本においては政府提出法案に対して野党は反対の立場をとり,野党提出の修正案もほとんど採択されず,与野党対立モードが基調となるのに対して,オランダにおいては政府提出法案に対して野党は基本的に賛成する立場をとり,かつ,数多くの修正案を提出して採択されることを法案審査データをもとに実証的に示し,与野党協調モードが基調となっていることを指摘した.こうした国会運営の比較政治学的特徴を分析した論文をまとめた.
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