研究課題/領域番号 |
15K03271
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
大林 一広 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (30598149)
|
研究分担者 |
飯田 連太郎 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 特任研究員 (50707502)
LEWIS Jonathan・R 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60282589)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流 / アメリカ / 政治的暴力 / ナイジェリア / 内戦 / 語り / 議会 / ツイッター |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、政治的暴力の発生や激化、収束と関係アクターの「語り」の頻度や内容の変化について分析することである。事例として、準民主主義国であるナイジェリアと成熟した民主主義国である米国を取り上げる。研究に際しては、先行研究のレビュー、「語り」データの収集と整理、そしてヒューマン・コーディングと自動内容分析(ACA)を行う。平成27年度には、まず、先行研究のレビューを通して、内戦中の立法府(議会)での議員による「語り」とツイッター上での主に市民による「語り」について分析することの必要性を確認した。その上で、特に議会での「語り」分析の有用性に注目して、リサーチ・ノートを執筆・出版した。既存の内戦研究は、国内の政治体制(民主主義レベル)が内戦の動態に影響を与えることを指摘している。だが、両者の間の因果関係のメカニズムを把握するためには、各国の政治体制を構成する各要素―諸制度―が内戦に際してどのように行動するかを確認する必要がある。議会での「語り」データは、立法府の行動を分析する1つの有用な手掛かりとなる。データの収集については、ナイジェリアにおけるツイッター・データの収集と、ナイジェリアの国民議会の議事録等文書の収集と掲載されている議員発言のデータベース化を進めている。自動内容分析のためには、発言のデータベース化をある程度時間をかけて注意深く行うことが必要となる。そのため、同作業を進めるのと平行して、主にヒューマン・コーディングに基づく議会資料の分析を行った。分析に際しては、第一段階として「議会はどのような政治的暴力事件に言及する傾向にあるのか」について、既存の議会研究に基づいた理論の構築と、資料のコーディング・計量分析を行った。分析結果は、国内外の研究会や学会で報告した。米国の事例については、現在、先行研究のレビューを進めると共に、データの収集方法等について確認を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、まず政治的暴力と「語り」についての先行研究の調査と両者の関係の理論化を進める予定であった。同時に、ナイジェリアと米国の事例について先行研究の調査を行うと共に、「語り」データの収集と整理を行う予定であった。政治的暴力と「語り」についての先行研究の調査については、ほぼ終了し、その成果をリサーチ・ノートとしてまとめて出版した。また、どのような政治的暴力事件が議会の注意を惹くか(議会が、どのような政治的暴力事件について語るのか)について、既存研究に基づいた理論の構築を行った。その上で、ナイジェリアの事例について、先行研究の調査と「語り」データの収集・整理・分析を進めた。ナイジェリアについての暫定的な分析結果は、国内外の研究会や学会で報告した。当初の予定では、ナイジェリアと米国の研究を並行して進める予定であった。しかし、まずはひとつの事例に注力して「語り」データの収集や整理、分析の方法について理解を深めることで、もうひとつの事例についてのデータ収集や分析を効率的に進めることができる。このような判断から、平成27年度は主にナイジェリアの事例について研究を当初の予定(データの収集と整理)よりも先(データの分析)に進めた。この結果、米国の事例については、データ収集の開始が遅れている。全体としてみると、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に引き続き、政治的暴力と「語り」についての理論の構築を進める。平成27年度は主に「議会がどのような政治的暴力事件について語るか」について理論の構築を進めたため、これを踏まえて、議会の政治的暴力事件に関する「語り」の内容とその効果に焦点を移して、理論化を進める。 ナイジェリアの事例については、平成27年度の議会の「語り」の分析結果を踏まえ、更に学会での報告や論文の学術雑誌への投稿を進める。同時に、分析対象時期を広げて、更なるデータの収集・整理を行う。また、新しく議会での「語り」の内容や効果の分析に着手する。更に、収集したツイッター・データの分析を開始する。これらの分析に際しては、ACAをより本格的に活用していく予定である。 米国については、先行研究の調査を完了すると共に、主に議会での「語り」データの収集と整理を進める。その上で、ナイジェリアの場合と同様に、「議会がどのような政治的暴力事件について語るか」について計量分析を行うことで、準民主主義国と民主主義国の議会の性質の相違についても確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
分析概念の構築や研究手法の確認のためにナイジェリアの事例についてのデータ収集・整理を先行させた結果、米国の事例に関連する作業の多くを平成28年度に先送りすることとした。この結果、関連する人件費(RA謝金)の支出が少なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に、米国の事例に関する研究を推進するため、RAの雇用等のために使用する予定である。
|