本研究では課税と財政支出を一体的に把握し、その公正さを評価する基準としてタックス・ジャスティスの定式化を試みた。市場社会は公益を実現すると同時に人間の尊厳を傷つける公共悪も発生させる。税は課税と財政支出を通して市場の結果に変化を与えることができるが、その変化は人間の尊厳を守る方向での変化でなければならず、そのような変化を実現する税が公正で正義にかなう税なのである。従来は課税局面での公正のみで税を評価してきたが、本研究は税は課税局面だけでなく、その支出と合わせて評価しなくては実質的な規範的判断ができないことを明らかにした。
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