本研究では、1980年代以降の縮減期における年金体制の政策変容について、年金体制の経路依存性、年金体制の政策変容の類型、そして縮減の政治の政策的帰結に注目し考察を行った。縮減期においては、公的年金の縮減に対する私的年金の拡大という「公―私」空間における制度改革が見られた。これに対し、2000以降、年金体制はそれまでの伝統的な経路から逸脱し、年金政策は「縮減」政策から「再編」政策へと変化した。公的年金への「概念上の確定拠出制度」の導入や私的年金に対する強制加入制度の導入などの改革は、年金を「個人勘定=貯蓄」制度として再編し、公的年金への依存度を縮小した政策であることを明らかにした。
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