研究課題/領域番号 |
15K03284
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
礒崎 敦仁 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (40453534)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 北朝鮮 |
研究実績の概要 |
金正日国防委員長の著作や朝鮮労働党中央委員会機関誌『労働新聞』といった従来資料に加え、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)政治に関する新資料を用いて、いかなる体制護持の論理が構築されていたのか、論調分析を進めた。さらに、従来の文献資料では把握しづらかった北朝鮮の政府・党機関に関する考察を深めた。 研究の成果は、学術雑誌への論文投稿や学会発表等で提示した。個人支配体制概念の金正日体制への適用を試み、その普遍性を考察するとともに、体制長期化に資した特殊性を抽出した。金正恩政権期については政策決定過程など体制内部に関する核心的な証言・資料が欠如しているが、金日成・金正日政権期については、米軍捕獲資料、ソ連・東欧文書に加え、各種法令、さらには脱北者・亡命者証言の活用が可能になっているほか、最高指導者の著作も続々と公開されている。北朝鮮政治研究において入手可能な資料が多様化し個別研究が急速に蓄積されるようになった昨今、その体制を比較政治学の土俵で論じうる余地は相対的に大きなものとなったとの問題意識による。また、その点は、最近の北朝鮮研究の動向にも合致する。同国の公式資料は、プロパガンダに過ぎないとの批判を受けつつも、依然として検証の価値がある。いわば体制の特殊性ばかりを主張していては同国政治体制の特徴を明示したことにはならず、他地域研究で用いられてきた複数概念の適用可能性を検討するのは意義深いことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献の精査は順調に進めることができたものの、それを補完しうる証言の収集は不足している。また、環境の変化もあり、当初予定していた国外出張を十分に行なうことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
金正日政権期にいかなる体制護持の論理が構築され、住民統制に用いられたのか、論調分析を継続する。論調の変化を客観的に示すため、キーワードの出現回数について着目する。文献精査の進捗に合わせて、聴き取り調査を進める。 また、資料動向調査を進めるとともに、金正日体制を他の地域の研究者等に説明しうる理論的枠組みの検討をより深化させる。すなわち、既存の理論をいかに北朝鮮政治体制に適用、咀嚼できるかを模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際環境や研究環境の変化により予定していた出張ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
より積極的な研究成果公表のため効率的な使用を心掛けたい。
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