当初の研究計画を1年間延長した最終年度である本年度には、ここまでの分析を踏まえて研究のとりまとめを進めた。そこでは、大きく二つのことを行った。 第一は、アメリカのFOIAでなぜ政府による情報公開の範囲が行政機関に限られたのかに関する、基礎的な分析のとりまとめである。これを明らかにするには、20世紀前半まで遡って連邦政府内における行政機関の法的・政治的位置づけを再検討する必要があり、1927年の連邦無線委員会の成立などを題材に行った検討を元に分析をまとめた。そこでは、連邦議会が行政機関に法執行の権限を与えるに際して、裁量からの逸脱を強く警戒しており、それを防ぐべく、主な政策執行手段であった行政審判の手続きを裁判所類似の厳格なものにしていたことが明らかになった。 しかし、20世紀半ば以降、行政機関の主要な政策執行手段は行政審判から規則制定へと変化しており、FOIAはこうした変化に対応しつつ行政機関を統制するために導入された面が強いことを示した。この部分の成果については、2019年5月に刊行された単著に盛り込まれている。 第二の部分は、1966年制定のFOIAについて、それが行政機関の手続き的統制に代わる物として導入されたことの検証である。この点については、従来立法の推進者として連邦議会下院のモス議員が注目を集めてきたのに対して、上院司法委員会とその委員長であったヘニングス議員の役割が大きかったことを示した。とくに、FOIAの役割として、行政機関が従来表に出そうとしなかった情報を開示させるだけでなく、行政処分や規則制定に至る内部の意思決定に関する資料を整理・公開させることとした点が重要であるという結論に達した。現在ペーパーをとりまとめているが、2020年7月の世界政治学会世界大会に採択されていたところ、新型コロナウィルスの蔓延により延期となったため、別の発表の機会を模索している。
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