研究課題/領域番号 |
15K03290
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
鹿 錫俊 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (20272784)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蒋介石 / 日中戦争 / 日記 / 中国 / 日本 / 外交 |
研究実績の概要 |
1.〔資料の収集と分析〕本研究は蒋介石をはじめとする中国要人の日記と多国間公文書との相互検証に基づき、日中戦争の虚像と実像を究明するものである。2015年度ではまず基礎作業として資料の収集と分析に努めた。蒋介石と王世杰、徐永昌らの日記の分析を続けるとともに、馮玉祥、周仏海、張公権、陳布雷、陳誠、沈昌煥、肖軍、陳克文、胡宗南、吉星文ら要人の日記の精読にも取り組んでいる。 2.〔研究の進展〕資料分析の深化に伴って、研究の面では、①「抗日」と「防共」の優先順序をめぐる中国の葛藤、②蒋介石の対ソ構想と抗日戦の発動、③日本の和平工作とドイツの調停をめぐる中国の論争、④太平洋戦争勃発に至るまでの中国の「国際的解決」戦略の展開過程といった諸問題を中心に考察を進めた。その結晶として、「蒋介石の対ソ葛藤と抗日決断」と題する雑誌論文を掲載したほか、著書『蒋介石の「国際的解決」戦略(1937-1941):「蒋介石日記」から見る日中戦争の深層』を出版した。この著書は筆者の既存成果を基礎にし、2015年度の大東文化大学「研究成果刊行助成金」の交付を受けて上梓したものであるが、修正と校正の過程で今年度の研究によって得た新しい知見も反映している。 3.〔国際学会での発信と交流〕2015年は第二次世界大戦終戦70周年であるため、内外の要請を受けて、①「戦争の歴史と記憶」国際シンポジウム(2015年7月、台北)、②「近代中日関係の多面相」国際シンポジウム(2015年8月、台北)、③「抗日戦争勝利70周年記念」国際シンポジウム(2015年9月、北京と重慶)、④「戦争・対立から和平へ」国際シンポジウム(2015年11月、千葉商業大学)、⑤「中日戦争衝撃下のアジア」国際シンポジム(2015年12月、台北)などの国際学会に参加し、「学会発表」欄に記した本研究の成果を積極的に発信し、学術交流を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既定の目標を達成したうえで、国際学会への積極的な参加によって、日中戦争史に対する中華人民共和国当局の認識と対応の変遷過程に関する多くの貴重な情報を入手し、昨今の中国の歴史認識の深層とその影響を探求できた。これは「1937-1945年における日中戦争の虚像と実像の研究」という当初の計画を超えて、「1949年以降中華人民共和国当局の日中戦争史関連の歴史認識」という新次元の研究に昇華し、本研究の意義を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.大学の休暇期間を利用して米国に出張し、フーバー研究所で蒋介石日記の閲覧と抄録を行なう。同時に、スタンフォード大学、コロンビア大学、国会図書館などで所蔵の日中戦争関連の一次資料を収集する。 2.日本、中国大陸、台湾の資料機関と研究機関で一次資料の収集と解析を続ける。 3.私文書と公文書の多角的な相互検証を進め、日本国際政治学会の2016年度大会で本研究の新成果を報告するとともに、本研究が開始した以降の学会報告を論文と著書として仕上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.2015年度では多くの国際学会に参加したが、特別招聘者として選ばれたため、参加費用は開催先による負担がほとんどで、科研費からの支出は一回だけであった。予想外のことである。 2.資料収集の効率を高め、時間および国際旅費の節約をはかるため、米国での蒋介石日記の抄録とその他の研究調査を2016年度で集中的に行なうことにした。そのため、年度ごとの使用額を調節した。
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次年度使用額の使用計画 |
米国での研究調査を約6週間連続で集中的に行なうほか、中国大陸と台湾などでの研究調査も強化する。
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