平成30年度は,政党間競争の理論的研究を引き続き中心に行ってきた.本研究の中心は(1)選挙,(2)政策形成,(3)分裂・新党の3つの事象を一連の事象として連関性をもたせて,議会政治過程の動態を克明に記述するモデルを構築することであるが,政党の分裂と新党の結成を記述する動的モデルの構築に困難な場面があり,今一度再考しており,本来は代数的表現形式を採用しようとしていたが,動的モデルの観点から解析学的なモデルに変更を考えている. だが,研究の過程で政治過程の幾つかの場面に応用する可能性が発見された.本研究は交換ネットワーク理論を基礎にゲーム理論も応用することから,派生的研究も行い研究の幅をひろげた.ゲーム理論の応用として契約理論を用いて,政策転換が如何にして起こるのか,そのメカニズムをモデル化した.そこで採りあげた事例は,日本で2000年代から急速に展開されてきた社会的規制緩和であり,そこには選挙における政党間競争が影響を及ぼしていることを理論的に分析した.この研究は2019年の日本政治学会で報告した. 実証分析に関しては,政党間競争における選挙における集票構造を,グラフィカルモデリングにより因果構造をモデル化し,棄権の増加と投票率が低水準になる構造を分析した.またサーベイデータを用いて有権者の政策選好から構成される政策空間の一部が超保守的な有権者により歪められ,それが政党間競争に及ぼす効果を分析した.この成果は「有権者の政策空間の変容と参加」として中央大学社会科学研究所叢書の一編として2019年秋に出版される.
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