研究課題/領域番号 |
15K03292
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鳴子 博子 中央大学, 経済学部, 准教授 (00586480)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ルソー / 戦争 / ジェンダー平等 / アソシエーション / 国民国家 / 一般意志 / パリテ |
研究実績の概要 |
本研究は、四年計画で<戦争と女性>をめぐり「国民国家とアソシエーション」論の再検討を通して、戦争をしない国家の創出の論理を探究しようとするものである。平成28年度は研究課題「ルソーの戦争論と「膨張しない国家」の論理の探究」を掲げ研究を進めた。 本年度の前半は、社会思想史学会第41回大会(鳴子は開催校責任者を務める)・セッションD「社会思想におけるリプロダクション」における報告「ルソーのリプロダクション論と18世紀―授乳と戦争―」の準備を進めた。セッションは後藤浩子・法政大学経済学部教授の企画によるもので、リプロダクション(生命の再生産)というテーマは、鳴子にとって新しい研究課題となった。前年度の拙稿「<暴力-国家-女性>とルソーのアソシアシオン論」(『中央大学経済研究所年報』)では、女性と暴力、国家をめぐる問題をルソーの理論を分析視座としつつ現代に拡げて論考したが、本報告では現代から18世紀に分析の場を戻すことになった。今回の作業は図らずもルソーの原理論の再検討、しかもリプロダクションというこれまでと異なった切り口での再検討となり、今後の研究の進展に非常に有意義であった。 本年度後半は、学会セッションの報告原稿を基に以下の2論文①②を執筆、完成させた。①「ルソーのリプロダクション論と18世紀―授乳と戦争―」(学会報告と同タイトル、『経済学論纂』)②「ジェンダー視点から見たルソーの戦争論―ルソー型国家は膨張する国家なのか―」(『法学新報』)である。①は学会報告の4章のうちの第1章から第4章第1節までの部分に当たる。②は同第4章部分を基に、ボーヴォワールのルソー批判への再批判および近年のベルナルディの戦争論への疑義を加えて、内容を拡充、発展させた論考である。リプロダクションの視点を得て、ルソーの契約国家も膨張する国家となる危険性ありとしたベルナルディへの反論に踏み出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は学会報告を行うとともに、2つの論文を執筆、完成することができた。学会報告はセッション企画者の後藤浩子教授からの依頼によるものであり、セッション「社会思想におけるリプロダクション」というテーマからリプロダクション(生命の再生産)という新たな切り口が得られたことは研究の進展に大いに役立った。 他方、「膨張しない国家」の論理の探究に関しては、2つ目の論文「ジェンダー視点から見たルソーの戦争論―ルソー型国家は膨張する国家なのか―」において着手できたが、今後、さらに検討を深める必要がある。また、ジュネーヴ等、海外での文献、資料収集を次年度以降に実施することにした点も勘案して、上記の区分選択となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は研究課題として5つの課題を設定している。そのうち、本年度の課題は「ルソーの「アソシエーション=国家」の論理の追究」である。 本年度前半は、18世紀フランスの革命=内戦という歴史的現実と向き合い、暴力の問題を探究する2つの論文①②を執筆する予定である。①は「フランス革命における暴力と女性(仮)」(8/31原稿締切)で、『経済学論纂』に掲載予定の論文である。11月(予定)に第27回(社会科学研究所)中央大学学術シンポジウム・理論研究チーム主催の「ジェンダー・暴力・デモクラシー」をテーマとするシンポジウムが開催される(同チームの代表を務める)。同シンポジウムで上記の論文の内容をさらに拡充させた口頭発表を行う予定である。②は「フランス革命と思想―ルソーの市民宗教論とロベスピエール(仮)」である。本論文は、思想誌『nyx』(5号「特集 革命」11月刊行予定)の依頼に応えて執筆するものである。 本年度後半は「サン=ピエール・ルソー・カント関係からルソーの国際秩序構想を探究する」および「ルソーの『ポーランド統治論』から国家の<膨張-縮小>と国家の防衛を考える」というテーマの下、論文執筆や海外での文献、資料収集(平成30年3月、ジュネーヴ)を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最大の理由は、海外での文献、資料収集を本年度は行わなかったためである。今年度(平成29年度)と翌年度(平成30年度)に実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
複数の論文執筆およびシンポジウムでの報告が予定されており、内外の多くの文献の購入が必要である。したがって、まず書籍の購入費にあてられる。さらに、海外での文献、資料収集を年度中(平成30年3月、ジュネーヴ)に実施するため、海外旅費を支出する予定である。
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