研究課題/領域番号 |
15K03292
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鳴子 博子 中央大学, 経済学部, 教授 (00586480)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ルソー / 戦争 / ジェンダー / フランス革命 / 暴力 / 道徳 / アソシエーション / 国民国家 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は<戦争と女性>をめぐり「国民国家とアソシエーション」論の再検討を通して、戦争をしない国家の創出の論理を探究することである。当初の計画の、平成29年度研究課題は、「ルソーの「アソシエーション=国家」の論理の追究 」であったが、前年度の課題「ルソーの戦争論と「膨張しない国家」の論理の探究」を進めるなかで、戦争一般から革命へと分析対象の重心を移す必要が生じた。言うまでもなく、革命は反革命との内戦を伴い、革命を阻もうとする諸外国との戦争を惹起しがちであるがゆえに、革命は戦争とともに重要な分析対象となる。そのため、29年度の研究課題は「ルソーの革命概念からの<フランス革命とジェンダー>の探究」となった。 まず、学生をはじめとする広い読者に向けて学内誌『白門』にルソーの国家論をジェンダー視点から捉えた論文「『ヨーコさんの“言葉”』から始める「ジェンダー国家論」」を発表した。次いで、思想誌『nyx』(「革命」特集号)の依頼を受けて、ルソーの特異な革命概念に着目した論文「ルソーの革命とフランス革命―暴力と道徳の関係をめぐって―」を執筆した。さらに、「ジェンダー・暴力・デモクラシー」をテーマとする中央大学社会科学研究所シンポジウムにおいて「ジェンダー視点から見たフランス革命―暴力と道徳の関係をめぐって―」を口頭発表した。1789年から1794年までの4つの民衆の直接行動を分析したこの論考は報告書(2018年3月1日発行)に収められた。加えて、『中央大学経済研究所年報』に論文「フランス革命における暴力とジェンダー―バスチーユ攻撃とヴェルサイユ行進を中心に―」を執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、学内誌、紀要、学外の思想誌と性質の異なる媒体に論文を執筆するとともに、本研究と密接なかかわりのあるシンポジウム「ジェンダー・暴力・デモクラシー」(学内外の8名の報告からなる)の責任者を務め、自身も口頭発表を行い、その内容を報告書にまとめることができた。 研究実績の概要にも記したように、29年度の研究課題の変更は、研究の進展による前向きの修正であり、本研究全体の研究課題は一貫している。ただ、これら複数の論文執筆にシンポジウムの開催が重なったために、海外での文献、資料収集を行う時間がとれなくなった。海外での資料収集の時期をずらし、次年度に実施、予算執行することにした点を勘案して、上記の区分選択となった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究課題は「ルソー的視座からの<フランス革命とヨーロッパ政治秩序>の探究」とする。 口頭発表と論文の予定は以下の通りである。①第27回中央大学学術シンポジウム(2018年12月8日)において「(仮題)ルソーの『ポーランド統治論』から見たフランス革命とヨーロッパ政治秩序―拒否権をめぐって―」を口頭発表し、論文化する。②「ジェンダー視点から見たフランス革命」のテーマについては、分析の時期を1790年以降に移して、年度内に新たな論文を執筆、完成させる。 特に30年度は29年度に行えなかった海外での資料収集を夏期(8月下旬から9月上旬)と春期(2月下旬から3月上旬)にパリ、ジュネーヴで行い、研究の推進に努めることとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は異なる媒体への論文執筆が続いたこと、研究課題と密接な関係のあるシンポジウムの開催(開催の責任者であり、自身の口頭発表も行った)とが重なったため、海外での資料収集が行えず、その部分の予算執行ができなかった。その点が主な理由である。平成30年度は海外での資料収集を確実に行うことにする。
|