ルソーの政治構想は、従来、時にナショナリズムを準備するもの、国家の膨張を許す論理を内包するもの(近年の例ではベルナルディ)と捉えられてきた。こうした理解に反して、本研究は、ルソーの政治構想が国民国家の論理とは一線を画す、膨張しない「アソシエーション国家」の論理であることをフランス革命(内戦と諸外国との戦争を伴う)の分析を通して明らかにした。 同時に本研究は、ルソーの性的差異論の視座から革命期の民衆の直接行動の分析を進めた。受動から能動へ転じたヴェルサイユ行進とそれ以降の女性たちは、ルソーの構想を超え出ており、公領域での働きかけは暴力を道徳の次元に転換させる道を開くものであることが明らかにされた。
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