研究課題/領域番号 |
15K03293
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
西川 伸一 明治大学, 政治経済学部, 教授 (00228165)
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研究分担者 |
小森 雄太 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70584423)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 軍法務官 / 政軍関係 / 軍法会議 / 秩序維持 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究成果:平成27年度は、本研究課題の実施初年度であることを踏まえ、本研究課題の基盤となる研究課題(学術研究助成基金助成金(基盤研究(C))(研究課題名:戦前期日本の司法と軍のインターフェイスとしての軍法務官に関する実体研究、研究代表者:西川伸一))において提示した研究知見を再確認するとともに、本研究課題を本格的に実施するために検討すべき論点の整理や課題の析出を実施した。 併せて、前述の研究課題を実施した際に渉猟することができなかった本研究課題に関連する先行研究の収集や分析に取り組むとともに、国立国会図書館をはじめとする公文書館が所蔵する史資料や『官報』をはじめとするデータベースに採録されている史資料の収集や分析を実施した。 以上のように、平成27年度は、来年度以降に本格実施するために必要な史資料の収集や整理といった基礎的な調査を優先して実施した。平成28年度以降は、これらの分析結果を踏まえ、論文執筆あるいは研究報告などを通じて研究成果を発表することを予定している。 なお、本研究課題における重要な分析視角である政軍関係に関する調査研究については、立憲君主制における政軍関係のあり方に関する調査研究を実施し、国際学会においてその成果を報告している(下記研究業績欄参照)。 研究成果の意義・重要性:平成27年度に実施した調査研究を通じて、軍法務官の実態を明らかにするための環境整備をある程度完了したことは、今後の調査研究を効果的に実施するためには必要不可欠であり、今年度の大きな成果として評価しうると考える。また、立憲君主制における政軍関係に関する調査研究に取り組み、その特徴を明らかにしたことは、軍法務官が設置・運用される基盤の実態を解明したことを意味しているが、同時に今後の調査研究を飛躍的に発展させうる知見であり、これも今年度の大きな成果として看做しうると思料する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、本研究課題で取り組むべき課題の析出を実施するとともに、先行研究の渉猟を実施し、平成28年度以降に本格実施するための環境整備を優先して実施した。特に本研究課題の採択以前に実施した研究課題(学術研究助成基金助成金(基盤研究(C))(研究課題名:戦前期日本の司法と軍のインターフェイスとしての軍法務官に関する実体研究、研究代表者:西川伸一))の実施終了後に発表された関連諸分野の学術論文や図書を渉猟し、本研究課題に関連する諸分野における調査研究の最新動向を把握したことは、平成28年度以降の調査研究を発展させる上で重要な成果であった。 これらの調査研究の成果については、平成28年度以降に学術論文や研究報告として発表することを予定しており、既に準備を進めているが、これらの調査研究を実施したことにより、本研究課題を達成するために必要な史資料の分析を行うことが可能となった。また、本研究課題の最も基礎的かつ不可欠な作業である内外の公文書館などへの史資料の調査についても、順調に実施している。 以上の点を総合すると、本研究課題は交付申請書提出段階の研究計画と多少の変更はあるものの、おおむね順調に進展していると思料する。なお、平成28年度は、これまでの研究成果を踏まえ、より一層強力に推進することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に収集した史資料を活用し、「軍法務官の身分変更の前後両1年における量刑変化の量的把握」や「中間成果物としての配属先別軍法務官リストの作成」といった本研究課題において最も重要な作業に着手する。 「軍法務官の身分変更の前後両1年における量刑変化の量的把握」は、1942年に実施された陸海軍の軍法会議法改正に伴う軍法務官の身分変更により、量刑にいかなる影響を及ぼしたのかを明らかにし、軍法務官の位置づけを明らかにすることを目的としている。そのため、法改正前後の両1年の裁判記録から判決を対照表にして、量刑変化を量的に把握することを目指す。 また、「中間成果物としての配属先別軍法務官リストの作成」は、高等軍法会議、各師団軍法会議および外地三軍(朝鮮軍・台湾軍・関東軍)の軍法会議(以上陸軍)、高等軍法会議、東京軍法会議、各鎮守府・要港部軍法会議および艦隊軍法会議(以上海軍)などといった軍法務官の配属先に注目し、各軍法会議の「個性」を測定することを目的としている。そのため、これまでの調査研究を通じて作成した軍法務官データベースを活用し、その「個性」を明らかにすることを目指す。 平成28年度は、上記作業を中心に研究を行うが、作業の進捗状況を把握し方向性を検討するために、研究代表者、連携研究者、さらには『官報』および軍法会議の裁判記録の閲覧作業に携わる大学院生によるミーティングを隔月で開催する。加えて、軍部の人事や軍法会議に精通した研究者を招聘し研究会を実施する。併せて、日本裁判官ネットワークの例会や憲法史研究会に出席し、軍事と司法の関係について現職裁判官や研究者と意見交換を行うことも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、前記(研究実績の概要)の通りの調査研究を実施したが、本研究課題に関連する資料の収集を優先させた。そのため、申請段階で予定していた研究協力者及び史料収集に従事する大学院生の作業の進捗状況や方向性を把握することを目的としたミーティングや軍法務官に関連する諸分野の研究会への参加、日本政治史や行政学研究者との意見交換を実施しなかった。そのため、次年度使用額が生じたものの、他の作業は当初の想定以上に進捗しており、全般的には本研究課題は順調に遂行されていると考える。 平成28年度以降については、上記ミーティングや意見交換を実施するのみならず、他の調査研究や研究成果の発表などを積極的に実施し、申請段階での研究計画を達成しつつ、かつ本研究課題の目的を達成するよう精力的に調査研究を遂行したいと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の使用計画としては、上述の「今後の研究の推進方策」記載の内容を実施するとともに、平成27年度に実施した史資料や関係資料の収集および分析・評価を実施するとともに、研究代表者や研究分担者、隣接分野を研究している若手研究者の間で継続的に議論を実施し、研究知見の精緻化を図る。そして、本研究課題の実施状況に関する中間報告を兼ねて、『軍事史学』や『年報政治学』など査読付き学術雑誌へ投稿する論文をまとめる。併せて、国際発信の観点から上記の成果物の要旨を英訳し、研究代表者がすでに開設している個人ホームページ(http://www.nishikawashin-ichi.net/)上に掲載し、研究成果の普及促進を図る。
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