研究課題
最終年度に当たる本年度は、トクヴィル自身のアルジェリア論、関連する植民地論(英国のインド統治論など)、アメリカ西部開拓論について積み重ねてきた読解を再点検したうえで、同時代(1830年代、1840年代)フランスにおける種々のアルジェリア言説の文献調査を進め、それらとの比較を通してトクヴィルの立論の特質を解明した。最後の資料・文献調査として2018年2-3月にはフランス(パリ、エクサン・プロヴァンス、ペルピニャン)および米国(ニューヨーク、プリンストン、ピッツバーグ)に出張した。フランスでは特に国立文書館海外部門分館(エクサン・プロヴァンス)においてディジョベールなどトクヴィルに対立してアルジェリア撤退を唱えた政治家やジャーナリストの言説を調査し、ペルピニャンではアルジェリアからの帰還フランス人(ピエ・ノワール)が設立した歴史博物館において資料調査し、アルジェリア植民の歴史が(一部の)フランス人にどのように記憶されているか、貴重な知見を得た。米国ではニューヨーク市公共図書館、プリンストン大学においてトクヴィルのアメリカ旅行に関連する資料調査を行い、ピッツバーグでは米国のトクヴィル研究を牽引してきたS・ドレッシャー、J・T・シュライファー教授と面談、意見交換を行った。これら米国での調査の結果、トクヴィルのアルジェリア論がアメリカ西部開拓を実見した体験と結びついていることが確認された。本研究の狙いの一つで十分に展開できなかった重要な論点はトクヴィルの軍隊・戦争論とアルジェリア植民地論との関連である。国民全体としては平和を志向する民主国が強大な軍隊を有することに警鐘を鳴らしたトクヴィルの論理にとって、植民地征服戦争はその危険を回避する格好の受け皿となり得るであろう。ただ、この点を実証するにはフランスの軍隊・戦争についてより総合的な検討が必要である。次の課題としたい。
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The Tocqueville Review/La Revue Tocqueville
巻: 38-1 ページ: 19-39