本研究の目的は、①東日本大震災の被災市町村に対する中央官僚の出向の背景、経緯、実態、効果等を明らかにし、非常時における中央地方関係の実態を解明すること、②日本の中央地方関係についての理論モデルを検証し、非常時における国と地方の役割分担のあり方や広域自治体(県)のあり方についての示唆を得ること、である。 ①に関しては、被災市町村の自治体運営にどのような変化が生じ、どのような人材を必要としたのかについて、国及び関係市町村の報道資料や議会議事録、マスコミ報道、関係者の手記、研究者による研究論文等を渉猟し、時間軸に沿った整理を実施した。同時に、被災市町村にどのような経歴を持つ人材が実際に出向してきたのかを明らかにするため、各種名簿等を用いて当該出向官僚のキャリア分析も行った。さらに、それらの背景を踏まえつつ、実際に被災自治体に出向した中央官僚へのインタビュー調査を実施した。また、平常時における中央官僚の地方出向についてデータの収集・分析も行い、近年の動向の変化を把握するとともに、非常時の地方出向との相違点の検証を進めた。 ②に関しては、中央地方関係に関する先行研究のレビューを行い、既存の理論モデルについて検証を進めるとともに、国と地方の重要な結節点の一つである都道府県東京事務所と中央省庁との関係についても調査した。また、国・地方の役割分担や広域自治体(県)のあり方に関するこれまでの議論について、国の地方制度調査会創設以来の同調査会関係資料および同調査会での議論等をめぐる各種論文等の諸文献を調査し、歴史的および法的な面から検証を進めた。さらに、復旧・復興行政における県の役割が平常時とどのように異なっているのかを把握するため、文献調査を行い、関係者への聞き取り調査を実施した。 これらについて、初年度からの研究によって得られた知見をもとに成果をとりまとめ、論文として公表した。
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