研究課題/領域番号 |
15K03300
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
河本 和子 同志社大学, 政策学部, 准教授 (50376399)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ソ連史 / 経済史 / 労働紛争 |
研究実績の概要 |
最も大きな成果は、研究対象時期に発行された書籍と雑誌複数種類をロシア国立図書館で閲覧したことである。雑誌としては、『ソヴェト労働』、『社会主義的適法性』、『ソヴェト国家と法』、『ソヴェト司法』をそれぞれ10年分ずつほど閲覧し、当時の議論状況の把握に努めた。また、労働法に関係する書籍を閲覧した。特に重要であったのは、労働法の教科書的な位置づけの単著である。 こうした活動の結果、いくつかの論点が浮上した。第一に、労働者と企業が紛争状態に入る場合(典型的には解雇事案)に適用されるルールが変更され、それに関する広報活動が広く行われていることである。第二に、解雇が争われた事例の判決を見ると、日本でもありえそうな事案がある一方、解決方法として三権分立を前提とした社会ではありえないものが取られる場合があった。日本でありうる事案として、職それ自体を廃止することによって解雇を行いつつ、実際上は解雇される人物を狙い撃ちした事案をたとえば挙げることができる。解法として日本などではあり得ないのは、裁判所が特定企業の違法な解雇を認定した際に、判決を書くだけでなく、監督官庁に直接通報した事案である。この場合、司法が直接の当事者ではない行政に要求を突きつけた点で特異である。第三に、労働組合が発刊する『ソヴェト労働』誌において、大きな関心を寄せられているのが給与の計算方式・労働の評価方法であることが分かった。この点は従来の研究計画に個別具体的に盛り込んではいなかったが、労働者と企業の関係という観点には研究計画に合致するものであり、検討を進めたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料の閲覧をかなり進めることができた。労働に関する評価、給与の計算方式についてはもっと調査を進める必要があり、予断を許すものではない。
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今後の研究の推進方策 |
さらに資料の渉猟を進める。労働法関係の書籍を読み、他国との比較においてどのような特色があるかの検討を進めていきたい。 また、全体の構想を練る作業も進めていきたい。ソ連の政治体制において労働が枢要な位置を占めることは言うまでもないが、その具体的制度化・紛争解決にあたり、特徴的なこと・自由主義体制下でもあり得ることを腑分けし、ソ連の経済体制と政治体制をより結び付けた形で理解できるよう構造をつかみ取る必要がある。
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