研究の前提固めとして執筆していた、スターリン後のソ連民主主義の特色について考え「利益の同質性の中の齟齬」が松戸清裕ほか編『ロシア革命とソ連の世紀 第3巻 冷戦と平和共存』(岩波出版社)収録の論文として公表された。この論文で、自由主義を排除したソ連において、利益の同質性を若干緩めることにより自由主義をいわば裏口から呼び込んだことを示した。また、「革命・家族・自由――一九一七年一二月の婚姻と家族に関する二つの布告」を『現代思想』に公表し、時期を遡って革命期の家族法に関する動向を分析することで、利益の同質性がソ連における政治体制の根幹にあることを確認した。 平成27年度および29年度に収集した資料の中、特に連邦最高裁判例集、法学雑誌の学術論文等を用いて労働紛争に関する考察をまとめ、利益の同質性を放棄しない社会における紛争解決に力点を置いて、「裁判例に見るスターリン後の個別的労働紛争」とのタイトルにて、科学研究費基盤A「多文化共生社会の変容と新しい労働政策・宗教政策・司法政策に関する国際比較研究」若手研究会において2018年3月2日に神戸大学にて報告した。内容としては、ソ連の民主主義理念の特徴に触れ、その理念に関連付けて裁判と法についての解説を行い、スターリン後にもたらされた一般的な変化と労働政策・労働法上の変化について論じ、労働紛争の中でも重大な解雇事案について制度改正と判決にもとづいて分析を加えた。その際に得たコメントを取り込み、論文としてまとめる作業を行っている。
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