研究課題/領域番号 |
15K03305
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
久保 はるか 甲南大学, 法学部, 教授 (50403217)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 地球温暖化(気候変動) / エネルギー政策 / 専門的知見 / Building Blocks Approach / カリフォルニア / 条約の国内実施 / 漁業資源管理 |
研究実績の概要 |
第一に、国家主体の国際交渉が膠着状態に陥っている現状において、気候変動対策の取組みを先行させているカリフォルニア州について、その背景要因の調査を継続して実施した。4月16日~22日の間カリフォルニア州を訪問し、政策過程における専門的知見の活用方法に焦点を当てヒアリング調査等を実施した。そのヒアリング調査及び文献調査の結果を、2017年6月10日開催の環境法政策学会(横浜国立大学)において、「カリフォルニア州における温暖化対策の政策過程分析~法制度・行政機関・ネットワーク・専門的知見」と題して報告した。報告では、州独自の気候変動対策の政策過程について、①制度的要因、②アクターの行動の視点から分析し、得られる示唆を提示した。制度的要因としては、州法において目標値を定め具体的な制度設計を行政に委任する方式が排出量取引の導入等の決定を促したこと、合議制の行政組織を活用することによって、専門的知見のバランス確保と活用、政治的中立性の確保を促したことなどを指摘した。 第二に、「再考・条約の国内実施過程分析-地球環境保全に向けた諸アクターの分散型応答の影響‐」と題して、6月24日(土)、東京大学行政学研究会(東京大学)において研究報告を行った。ここでは、本研究が想定する地球環境課題に対する諸アクターによる分散型応答の傾向の高まりやBuilding Blocks Approach、Regime Complexといった新しいアプローチを踏まえた条約の国内実施過程分析枠組みに関する試論を発表した。 第三に、比較事例としての国際的な海洋資源管理と日本の漁業資源管理政策との連関に関する調査研究を継続した。日本の漁業資源管理政策の制度要因を知るために、水産庁の技官人事に関するヒアリング(2017年10月11日)、沿岸漁民による全国組織(全国沿岸漁民連絡協議会)の活動について文献調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度に一旦、条約の国内実施分析の枠組みに関する試論を取りまとめたが、パリ協定後の動きなど現実の変化が大きいため引き続き現状分析をつづける必要があり、それを踏まえて分析枠組みを再考しなければならない。 また、比較事例としての漁業資源管理についても現実が動いており政策変更に即した分析を行う必要がある。そのための現状分析に時間を要している。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度には、ますます顕著となっている地球環境課題に対する政府以外の諸アクターによる分散型応答の傾向を踏まえた分析枠組みを構築することを最終目標とする。まず、この様な変化が顕著な気候変動対策を事例として、分散的ダイナミズムを如何にマネジメントすべきか、翻って条約レジームと国内政策のあり方に与える影響に焦点を当てて分析する。2018年秋にはパリ協定の実施指針を決定する重要な締約国会合が開催されるため、会合にオブザーバー参加することを予定している。 また、比較事例として、漁業資源管理について引き続き調査分析を進める。2018年9月5日開催の国際法学会企画セッション「グローバル化時代における海洋生物資源法の再検討―国際と国内間の法・政策の連関をめぐる学際的対話の試み」においてコメンテーターを担うため、そこを研究スケジュールのメルクマールとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の最終年度には旅費を計上していなかったが、本年は2016年に発効したパリ協定の実施指針を決定する重要な締約国会合が開催されるため、会合にオブザーバー参加することを予定している。そのための旅費等経費を次年度に使用することとした。
|