本科研費申請書で研究課題の一つである「環境公益・国際規範のマルチレベルでの受容と呼応」について、昨年度から継続して漁業資源管理を事例に検討した。日本の従来型の漁業資源管理は、漁業者による自主的な資源管理を基本とする分権的かつ非統制的な構造を有してきた。条約では行政の統制を強めるトップダウン型の規制手法(TAC法)が求められたが、それに対して、従来型の漁業資源管理の実績を重ねてきた現場(主として根付の魚種を採取する地先漁業)レベルで、予防的アプローチといった国際規範が受容・共有され、自主的なルール形成がなされることの可能性と有効性について考察した。 研究代表者は、国際法学会(2018年9月5日)の分科会「グローバル化時代における海洋生物資源法の再検討 ――国際と国内間の法・政策の連関をめぐる学際的対話の試み」において、上記の観点からコメントを行った。コメントは、論文集『漁業資源管理の法と政策』(信山社、近刊)の「第7章:行政学の観点から―漁業資源管理の構造と変化―」で掲載予定である。 他国との比較として、昨年度から引き続き、カリフォルニア州の気候変動対策について研究を進めた。ALSA の2018年次総会に参加し、Session C(Climate Law and Policy in Japan: A Comparison with Those of California)において、「Administrative analysis of the climate and energy policy process」というテーマで、研究成果の報告を行った(2018年12月1日)。政策アウトプットの違いを生む要因として、とりわけカリフォルニアで、具体的な方策の立案について行政機関に大幅な委任がなされていること、気候変動対策を所掌する行政機関が合議体(委員会)であることに着目した。
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