最終年度ということで東南アジア全体についてのまとめと、ミクロデータを取得できたシンガポールでの有権者の政治制度に対する評価について執筆を進め、出版に向けた作業を行うことが主たる研究活動となった。結果として、学術書の章、ジャーナル論文、オンライン記事などの形態でいくつかの論点をまとめ、研究成果として発表した。 編著の章としては歴史的な視点から東南アジアの政治制度と社会亀裂を念頭に政治体制の変動を扱った章の刊行、ジャーナル論文としては、所得を含むシンガポールの有権者の属性が既存政治制度への態度の影響、そしてオンライン記事では、本研究の対象国のうち4ヵ国で実施された選挙(フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイ)を観察するなかで、所得格差、情報技術などの要因が、特に政党システムの制度化を阻害し、不安定な選挙政治を生み出していることを示した。 また、この研究事業の成果の一部として前年度に出版した編著『後退する民主主義、強化される権威主義』に対するフィードバックを他機関の研究会議等、いくつかの機会で得ることができ、東南アジアと他地域の比較の視点を得ることができた。
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