研究課題/領域番号 |
15K03310
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
東野 篤子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60405488)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | EU / トルコ / 中国 / 近隣諸国 / 安全保障 / 認識 |
研究実績の概要 |
2019年度は、EU・トルコ関係の現状と、それを取り巻くヨーロッパ国際政治上の環境の変化に着目し、論文を刊行する機会に恵まれた。以下、その主なもののみについて、概要を記する。 ① EUの安全保障・防衛政策の変容について、本研究課題の中心的なテーマであるトルコのEU加盟問題および欧州難民危機をめぐるEU・トルコ関係を軸として論じた論文を、編著の一章として寄稿した。同編著は、ロシアによるクリミアの併合が強行された2014年が、ヨーロッパの安全保障における分水嶺であったとの立場をとるものであるが、本研究課題で扱っているEU・トルコ関係も、2014年以降のヨーロッパ安全保障環境の変化から影響を受けており、本論文はこうした状況の変化について論じている。 ② 今年度は、本研究課題の中心的テーマであるEU・トルコ関係にも少なくない影響を及ぼす「外部アクター」の動向にも着目した。具体的には、EUとトルコを含めたヨーロッパにおいて多大な影響をもたらしつつある中国の一帯一路および「17+1」政策が、ヨーロッパにどのように影響を与え、(部分的にではあるが)ヨーロッパの分断をもたらしているのかについて、査読論文をジャーナルに掲載した。トルコ・中国関係の進展、とりわけ上海協力機構(SCO)へのトルコのアプローチについては、昨年度(2018年度)にも試論的な論文を編著の一章として掲載したところであるが、今年度は昨年度の研究成果をより広い文脈で整理し直し、新たな業績として発展させた。 ③ 上記①および②以外として、ウクライナにおけるゼレンスキー政権の成立がヨーロッパに与える影響や、EU拡大の経緯と展望について、専門誌に掲載、あるいは編著の一部として執筆した。これらはいずれも、本研究課題の総括および本研究課題に密接に関連する国際政治学上の変化について論じたものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果のとりまとめと発信については大方順調に進めていた。しかし、今年度の本研究課題の集大成的な成果を、米国国際政治学会(ISA)年次研究大会(ホノルル)で2020年3月に報告するつもりでいた。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により、当該研究大会は中止となり、研究成果披露の重要な機会がひとつ失われることになった。 また、2020年3月中ー下旬に、ベルギーのブリュッセルに2週間強滞在し、EU関係者に集中的にインタビューを行う予定でおり、アポイントの取り付けなどもほぼ完了していた。しかし、3月中旬の段階で欧州議会を初めとしたEU諸機関が東アジアからの来訪者との面談を受け付けないとの決定を行ったため、このインタビュー調査もキャンセルせざるを得なかった。このため、当該研究大会出席およびインタビュー調査実施のための旅費として確保しておいた本科研費も、来年度に繰り越すことになった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は新型コロナウィルスの流行により、3月に予定されていた海外での学会報告もなくなり、ブリュッセルを中心としたEU関係者へのインタビュー調査も中止せざるを得なかった。海外での学会報告は、本研究課題の成果を海外の著名ジャーナルに投稿するにあたって、非常に重要なプロセスであるため、最終年度である2021年度は学会報告を確実に行いたいところであるが、応募していた国際学会(2020年9月にマルタで実施予定であったヨーロッパ国際政治学会)が現時点ですでに1年の延期を発表するなど、学会報告のめどが立ってない。このため場合によっては、国際学会での研究成果報告をせずに、直接論文をジャーナルに投稿するなどの措置を執らざるを得ないとも考えている。とはいえ、可能な限り海外の学会での報告を目指す方針に変わりはない。 ヨーロッパに数週間滞在してのインタビュー調査に関しても、今年度実施がかなわなかったため、2020年度はぜひとも実現させたいところであるが、これは新型コロナウィルスの流行が収束するかどうかにすべてがかかっている。仮に2020年度も海外調査が出来ない場合には、内容的には著しく限定的になることは承知の上で、関係者にメールや遠隔会議でのインタビューを申し入れる等の代替措置をとることを検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の報告を予定していた米国国際政治学会(ISA)年次研究大会(ホノルル、当初予定は2020年3月)が新型コロナウィルスの感染拡大により、当該研究大会は中止った。また2020年3月中ー下旬に、ベルギーのブリュッセルに2週間強滞在し、EU関係者に集中的にインタビューを行う予定でいたが、これも新型コロナウィルスの感染拡大により渡航を取りやめざるをえなかったため、次年度使用額が生じた。2020年度は、感染症の収束上京を見極めながら、海外における学会報告の機会を模索しつつ、ヨーロッパにおけるインタビュー調査も実施する方針。
|