本研究は、メコン地域主義の新たな政治的位相を明らかにすることを目的とするものであり、主に政府レベル、地方政府レベル、市民社会レベルという三層の越境協力が分析対象となる。これまでに、市民社会レベルの越境協力の実態は十分に把握できたことから、本年度は、政府レベルの越境協力のフォローアップ調査と未だ十分に実態が把握できていない地方政府レベルの越境協力に焦点を絞って研究を進めた。 政府レベルでの越境協力については、バンコクを拠点にAyeyawady-Chao Phraya-Mekong Economic Cooperation Strategy (ACMECS)、Lower Mekong Initiative(LMI)、Mekong Institute(MI)、Mekong Basin Disease Surveillance(MBDS)に対して聞き取り調査と資料収集を行い、「メコン・コンジェスション」の実態把握を行った。加えて、「メコン・コンジェスション」を複数のレジームの重複状態と捉え、「レジーム・コンプレックス」に関わる二次資料のサーベイを行い、理論面からメコン・コンジェスションの分析に取り組んだ。 地方政府レベルの越境協力の調査対象とした事例は2つである。1つは、漁業管理の分野であり、調査地はラオスのボケオとタイのチェンライである。ここでは、メコン川を挟んで対面する村同士の協力プログラムの実態について入念な聞き取り調査を行った。もう1つは、公衆衛生分野であり、調査地はラオスのサバナケットとタイのムクダハンである。ここでは、県・州の保健省、国境の検疫所、関係するNGOなどへの聞き取り調査を実施した。
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