本年度は、これまでに行ってきた太平洋島嶼地域における台湾承認問題をめぐる越境的アクターとしての先住民族の政治的機能に関する調査・研究データの分析に基づいた、国際関係における国家の利害を反映した越境的アクターの政治的機能に関する考察を中心に、以下の段取りにそって、最終的な研究課題の取りまとめを実施した。 ①国際関係における越境的アクターの政治的機能について、補充的な関連文献の収集を進め、整理ならびに考察を行った。 ②太平洋島嶼地域における台湾承認問題をめぐる越境的アクターとしての先住民族の政治的機能に関する研究調査資料の精査を行った。そこから、台湾にとって外交空間が縮小する中で、台湾および太平洋島嶼地域の先住民族は、当初、太平洋島嶼地域における台湾の外交関係拡大を図る越境的アクターとして政治的機能を果たすことを台湾政府から期待されたが、台湾と太平洋島嶼地域との関係は、むしろ台湾政府がそうした政治目的を抑制した時期に、先住民族主体の交流が深まるなど、実質的な進展をみたことを明らかにした。 ③上記の実証分析に基づき、国際関係における国家の利害を反映した越境的アクターの政治的機能について総合的な考察を行い、それが必ずしも国家の意図した通りに展開されるのではなく、越境的アクターの主体性が増すことによって、その政治的機能が果たされる可能性も高まりうることを明らかにした。本研究結果を踏まえ、その成果の一部を国際シンポジウムにおいて発表するとともに、最終的研究成果を日本語ならびに英語による論文として表した。
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