研究課題/領域番号 |
15K03326
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
金 鳳珍 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (90254614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 朝貢体制 / 原理・規範 / 華夷意識 / 位階 / 主権 / 事大 / 属国 / 属邦 |
研究実績の概要 |
まず、「洪大容の燕行録の華夷観」(共著『使行の国際政治』高麗大学亜細亜問題研究所、2016、125-166頁)は、朝鮮における華夷意識やその変化を洪大容のそれを通じて考察した論文である。その意義は、朝貢体制の原理を構成する華夷意識の実像を明らかにしたことである。それによって華夷意識に対する既存解釈の過ちを正すことができると思う。 次に、'Rethinking the Traditional East Asian Regional Order'を書いたが、これはTaiwan Journal of East Asian Studies(June 2017)に掲載される予定である。この英語論文は平成28年度の研究実施計画に沿って、朝貢体制の原理、規範を思想史的に検討し、またその位階、固有の主権観念などを国際関係理論的に考察したものである。 第三に、「事大の再解釈」という題名のハングル論文を書いている。その目的は事大という概念を再解釈し、その実像を正しく理解することにある。そうして事大と言う概念はもちろん、朝貢体制に対して、今なお根深く存在する誤解や偏見を批判的に省察することができると思う。 最後に、「『朝鮮=属国、属邦』論考」という論文を、台湾中央研究院の学術研討会で報告した(2016年12月9日)。この報告論文は、近代以降、朝貢体制が変質していく過程のなかで発明された「朝鮮=属国、属邦」論を批判的に考察したものである。おそらく今年中(平成29年度)に、その中国語訳の論文が共著として出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したように、平成28年度の計画の三つの項目はほぼ達成している。ただし中国の台頭と東アジア地域秩序の将来に関する国際秩序変動論的な考察(三つ目の項目)は一部進展しているが、その本格的な考察はこれからの課題であるといえる。しかし今後、当初の研究課題に立ち戻って、その項目を少し変更する可能性もある。研究を進めていくうちに、当初の計画以外の課題が必要であると気づかされるので、その必要にも柔軟に対応したいからである。実はそうした課題にも取り組んできた。それは、現在までの進捗状況をみればわかる。その意味では、当初の計画以上に進展しているといってもよかろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後にも関連文献、史料・史料の収集と研究は継続する。また研究業績の公刊、学会・研究会への参加、学術交流などを持続的に行なう。と同時に、本年度の新たな課題に取り組んでいく。とくに本年度は最終年度なので、過去2年間の研究を総括し、学会・研究会での発表、論文執筆を進めると共に、報告書を作成する。なお、3年間の研究成果をまとめて一冊の著書を出版することも視野に入れて、研究課題に取り組んでいきたい。
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