近年、(冊封)朝貢体制の多層的枠組とその機能を分析考察する一群の国際関係学者の研究が次々と出現している。そうして東アジア伝統地域秩序に対する誤解や偏見を批判的に省察すべく、新たな朝貢体制論が形成されつつある。しかしその大きな欠陥と言えば、これらの研究は、その秩序を支えた儒教の原理にはやや疎い。それを補うために本研究は、儒教の秩序原理を思想史的に再考察し、「朝貢体制の原理、規範、慣行」の一部を明らかにした。関連してまた、朝貢体制の―近代国際秩序と違う形の―位階と固有の主権観念を分析考察した。これは今なお根強い近代主義的な理解や解釈を問いただし、かつ東アジア発の国際関係理論の発明に役立つのだろう。
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