4か年の本研究計画は、次の4つの目的からなる。第1に、EUにおいて導入された先行統合制度がどのような概容であり、かつ、どのような過程を経て導入されてきたのかを明らかにすることである。第2に、導入された先行統合制度がどのように運用されているか、初めての運用事例である国際結婚の解消に関する取決めに着目し、その言説と論点を分析することである。第3に、EUが先行統合制度を運用した2番目の事例であるといえる共通特許(「統一特許」と呼ばれる)に焦点を当てて、その言説と論点を分析することである。第4に、先行統合制度が国家間共同体としてのEUにもたらす影響について考察を加えながら、上記の作業に基づいて総括を行なうことである。 第1の目的は、平27年度に遂行した。第2および第3の目的は、平28年度から29年度にかけて遂行した。4年目に当たる平30年度は、第4の目的のために、海外出張および国内出張をそれぞれ一回行なった(海外出張:オーストリア、スロヴェニアおよびクロアチア、平30年8月27日~9月6日。国内出張:京都、平成31年3月4日)。 研究実績の成果の一部は、単著『EU共同体のゆくえ-贈与・価値・先行統合』(ミネルヴァ書房)において公表済みである(第9章「先行統合の制度整備-「より緊密な協力」の導入-)167-185ページ、第10章「越境協力・家族法・特許保護-「より緊密な協力」の実行へ-」186-204ページ)。
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