研究期間を延長して最終年度となった平成30年度には、残された課題であった盧泰愚、金大中、盧武鉉政権期を中心として、資料・文献調査や関係者への面談調査を行った。資料調査の面では、韓国外交史料館、国会図書館、金大中大統領図書館などで、主として政府やシンクタンクの刊行資料を中心に収集を行った。関係者の面談調査では、前政権の外交政策担当者の多数が刑事訴追されるなど、流動的な情勢が続いたために、対象を限定せざるを得なかったが、各政権の外交ブレインを務めた研究者を中心に調査を行った。 以上の資料・面談調査を踏まえ、金大中政権期の東アジア地域主義外交を分析した研究論文として、「金大中政権の〈東アジア共同体〉構想と日中韓協力――日韓関係との関連に注目して」(『アジア太平洋討究』第36号、2019年3月)を発表した。この論文では、近年刊行された金大中大統領著作集や講演録など、金大中大統領図書館の資料・文献を網羅的に使用した。 また、戦後韓国の地域主義外交を「東アジア共同体」構想を中心に包括的に整理した論考として、「東アジア共同体と韓国――〈ミドルパワー外交〉の視点から」(木村朗編『沖縄から問う東アジア共同体』花伝社、2019年)および「東アジア共同体形成の現状と課題」広島平和研究所編『アジアの平和と核』(共同通信社、2019年)を刊行した。 国際会議報告としては、金大中大統領図書館やソウル大学日本研究所などが主催した金大中・小渕共同宣言20周年記念国際学術大会(2018年10月1日、ソウル)に招請され、論文「日韓パートナーシップ宣言と東アジア共同体」を提出した。同論文は同会議の成果物として刊行された『金大中・小渕恵三共同宣言と東アジアの未来ビジョン』(2018年、韓国語)に収録された。
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