本研究は、日本の政権交代で対外政策の決定過程と政策アウトプットがどのように変化したかを分析し理論化するものである。日本では1955年の自民党結成以降、4度政党の異なる政権交代が起こったが、前政権の外交問題を含めた政策を批判して選挙を戦うため、新政権は独自色の強い政策を出そうとする。他方、対外政策には一貫性が求められ、外務省や防衛省では大きな政策の転換に対する抵抗が生まれる。 チャールズ・ハーマン(1990)の研究によると、そのような抵抗を突破するためには、官僚の率先や外的ショックに加えて、国内政治構造の変化やリーダーの主導という変化要因によって、政府が従来の政策決定過程を変えることによって、対外政策を大幅に変更する。日本の政権交代と対外政策の決定過程の変化を具体的な事例を検証し、上記の変化要因のうちどれが大きな影響を及ぼしたかを分析した。 具体的な事例として政党間の政権交代だけではなく、自民党内での政権交代による路線変更も対象にした。すなわち、鳩山・岸政権による吉田路線への挑戦、佐藤政権による吉田路線への回帰、田中政権での対中政策の変更、中曽根政権による日米同盟強化がそれである。その後、1993年の細川政権の発足、1994年の自社さ政権の発足、2009年の民主党政権の発足、2012年の安倍・自民党政権の返り咲きにおいてどのように政策決定過程が変化し、対外政策の結果に影響を及ぼしたかを分析した。 この成果は執筆中であり、この秋に千倉書房から『日本の政権交代と外交政策』というタイトルで出版される予定である。また、2018年10月13-14日に開かれる日本政治学会においても、研究発表の予定である。これに先立って、2012年の第二次安倍政権の外交政策については、2018年6月発行の国際安全保障学会の学術誌『国際安全保障』に論文が掲載される予定である。
|