研究課題
中国が急速に大国志向を強める一方、東アジアにおけるアメリカの国力と威信は今後も低下が避けられない。地域のパワー・バランスに構造的な変動が起こる時、アメリカと日本や韓国のような非対称な同盟関係はどのように再定義・再構築されうるのか。今後、数十年にわたって東アジアの国際関係の最重要課題の一つとなるこの問いに資するべく、本研究は、第二次大戦後の東アジア地域秩序の構造変動について、アメリカを軸にした長期的な見取り図を与えることを目指す。大国間のパワー・バランスの変化に対応して、アメリカと同盟国の間の関係はどのように調整され、それによって地域の秩序形成・維持のシステムはどう変容したのか。西欧植民地列強が撤退した50年代に、アメリカはいかにして地域の覇権的地位を自覚し、秩序形成・維持の責任を自ら担うに至ったのか。アメリカと外交史による検証を通じて、同盟国の間には、パワー・バランスの安定期には想像できないような多様なダイナミズムの作用の検証を目指している。インドシナ戦争をめぐる仏米関係について、今年度はアメリカ側から分析を行うと同時に、両国の動きを当時の日本人が、まだ記憶が生々しい仏印進駐と敗戦の経験を想起しながら、フランスのインドシナ戦争をどのように見ていたのか調査を行った。その成果をフランスの歴史家Jean-Noel Jeanneneyらが編集する共著 L’Histoire de France vue d’ailleurs のなかの1章として、単著 ”7 mai 1954: La chute de Dien Bien Phu" を公表し、フランスにおいて、以下の学術情報サイトに見られるような反響を得ることができた(https://www.herodote.net/Un_point_de_vue_decale-article-1622.php)。
2: おおむね順調に進展している
上記論文の執筆とともに、米国議会図書館においてハリマン文書の調査及びトルーマン大統領図書館における大統領とホワイトハウス高官らの史料収集を行った。
今年度は1953年以降のアメリカ側の同盟戦略を検証するための史料調査としてアイゼンハワー図書館とジョンソン大統領図書館を訪問するとともに、脱植民地化のプロセスと同盟の形成と発展の連関を探るために、イギリス公文書館、フランス外務省及び海外領土公文書館、オランダ公文書館の訪問を検討している。
2016年8月にフランス海外領土公文書館での調査を計画していたが、論文の校正作業が入り、見送らざるをえなかった。また年末から3月にかけての北米での天候悪化・大雪のために米国での史料調査を延期せざるをえなくなったためである。
史料調査の遅れを取り戻すために、今年夏から秋にかけてアイゼンハワー大統領図書館、ジョンソン大統領図書館、フランス海外領土公文書館、イギリス公文書館などへ精力的に足を運ぶとともに、暫定的な研究成果を学会や研究会等で公表するように努める
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史学雑誌
巻: 125巻5号 ページ: 372-378頁