研究課題/領域番号 |
15K03340
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
鳥潟 優子 同志社女子大学, 現代社会学部, 准教授 (60467503)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外交史 / 同盟 / 脱植民地化 / 援助外交 |
研究実績の概要 |
中国の台頭で急速に変動する現代の東アジアの地域パワー・バランスの分析に資するべく、本研究は、第2次大戦以降のアジアにおける2つの秩序移行期、すなわち、アメリカの覇権確立期にあたる1950年代と、覇権衰退期である1970年代に焦点を合わせ、アメリカとそのジュニア・パートナーである同盟諸国との間の非対称な同盟関係がいかに変化したのかを実証的に分析を試みている。平成29年度、在外研究の機会を得て、米国ハーバード大学に滞在し、アメリカ外交史家Fredrik Logevall教授と冷戦史研究者Arne Westad教授のアドバイスを受けつつ、インドネシア独立をめぐる米蘭英関係を中心に、アジア冷戦の起源と東南アジアにおける覇権交代とアメリカの同盟政策、アジアとヨーロッパとの間の国際関係の連関性について研究を深めた。 平成29年度には、特に、インドネシア独立戦争に対するアメリカ国務省の対応が、戦後アメリカの東南アジア政策の起源につながるとの見方から、国務省が1949年3月に作成したPPS51に注目した。国務省資料によると、PPS策定の目的はインドネシアにおける共産主義の封じ込めにあったことが明らかになった。アメリカは、オランダに対して、イギリスのインド政策に倣ってインドネシア共和国に独立を付与するよう説得を試みていたが、オランダは1948年12月、共和国指導者に共産勢力の影響が強まっていると主張し、武力による独立指導者の鎮圧を行う。この第二次警察行動をみて、アメリカはオランダが弾圧によって共和国のナショナリストを共産勢力側に追いやることを恐れ、オランダにインドネシアを任せて置くことはできないと見切りをつけ、自ら東南アジアの秩序維持に乗り出すことにした。アメリカはなぜオランダに対する説得に失敗したのか、米蘭間でいかなる認識の相違が生じていたのかを米蘭英仏の資料で跡付けようとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トルーマン大統領図書館、米国立公文書館、オランダ国立公文書館、英国立公文書館等で調査を行った。また1月下旬から2月頃に予定していた米国立公文書館や大統領図書館などでの資料収集が米現政権による政府閉鎖の可能性により見送らざるをえなくなったことも理由として挙げられる。 平成29年度は研究実績の概要に記載した研究を行ったが、その成果の公表まで行うには至らなかった。平成30年度に学会・研究会での報告や論文の公表、学会誌への論文の投稿を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
予定より研究の進捗は遅れることになったが、アメリカの東南アジア政策起案の契機となったインドネシア独立戦争と米蘭の外交交渉のプロセス、およびそれ以降見られるようになるアメリカ同盟および安全保障政策におけるアジアとヨーロッパの連関の起源など、新たな研究の視座を獲得することができた。平成30年度は日本国際政治学会での報告を行うと共に、学会誌への論文投稿に向けて論文執筆を行う予定である。同時に追加的な史料収集を、トルーマン大統領図書館(ミズーリ州)、ケネディ大統領図書館(マサチューセッツ州)、ジョンソン大統領図書館(テキサス州)、米国立公文書館(メリーランド州)、オランダ国立公文書館、英国立公文書館、フランス外務省公文書館などで行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:本科研に関して、平成29年度に滞在したハーバード大学において、オランダのインドネシア撤退とアメリカの関与に関する考察を行うようアドバイスを受け、大幅な研究計画の変更を行った。当初の予定より相当多くのアメリカにおける資料調査(各大統領図書館と国立公文書館、議会図書館など)が必要になった。またアメリカでの生活の立ち上げと帰国準備にも予想以上に時間を要した。時間的制約からヨーロッパでの資料収集も手薄になった。 使用計画:アメリカとヨーロッパにおける追加的な資料調査が相当多く必要であるため、それぞれの調査・出張を計画的に行うとともに、国内での学会および研究会報告を予定しており、それらの費用として使用する予定である。平成30年度には、米国での学会報告の準備も行う予定であり、パネルの企画のため打ち合わせ等のための出張の費用も計上している。
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