研究課題/領域番号 |
15K03341
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
片山 裕 京都ノートルダム女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10144403)
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研究分担者 |
木場 紗綾 同志社大学, 政策学部, 助教 (20599344)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | NGO / 国際協力 / 人材育成 |
研究実績の概要 |
初年度にあたる平成27年度は、2010年以降の欧米ドナーの東南アジアへの援助動向に関する研究、いわゆるBeyoned Aidと呼ばれる東南アジアにおける新興ドナーに関する理論的研究、東南アジアにおけるRights-Based Approachの導入と定着に関する先行研究の収集を主な活動とした。下半期には、日本国内およびフィリピン(マニラ首都圏)にて開発NGOおよび政府機関への聞き取り調査も実施した。 フィリピンにおいては2010年以降、社会福祉開発省が世界銀行及びアジア開発銀行の融資を受けて最貧困層へのサービス提供を実施しており、その過程において多くの「元NGO職員」が同省の契約ソーシャルワーカーとして雇用されている現状が明らかになった。従来、政府が担えないサービス供給を担っていた「NGO業界」が、経済発展に伴うドナーの退場によって縮小し、NGO業界の人材が政府に移動するという現象がみられる。そして問題は、こうした人材のセクター間移動は社会サービスの質の向上やガバナンスの深化を意味するのか、それとも単に政府セクターで働くべき人材が戻ってきただけなのかという点である。パブリックセクターを大きくできない、官僚を増やせない国家が使いやすい元NGO職員を短期契約で雇用しているだけなのか、それとも、NGOで経験を積んだ人材が国家のプロジェクトに関わるのはガバナンスに対して何らかのインプリケーションを持ちうるのだろうか。この点に関し、すでにアジア開発銀行や世銀は分析を始めている。 この図式は日本の国際協力人材のNGOから政府への移動モデルと重なっており、これらの国際金融機関の評価報告や各種の先行研究をすることで、先進国と中進国、援助国と被援助国という差異を超えた日本と東南アジアの国際協力人材の分析枠組みを構築することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
文献調査、現地調査ともに予定通りに進んでいる。 先行研究に関しては、世界銀行やアジア開発銀行による評価報告や各種の先行研究を収集、分析している。具体的には、ガバナンス・インデックスにおいて使用されているinstitutional capitalの概念を援用し、元NGOがプログラムに関与することで政府と末端住民との関係はどうなったのか、住民と既存のinstitutionとのinteractionはどうであったかなどの項目をすでに抽出した。今後それを修正しつつ、事例分析のフレームワークとして使用していくつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
二年目は、現地調査を行いつつ、国際開発学の分野の国際学会および英文ジャーナルでの成果報告を通じ、実務家や研究者からのフィードバックを得る予定である。具体的には、2016年5月に韓国ソガン大学でのBeyoned Aidに関する国際会議およびタイ王国マハサラカム大学でのグッドガバナンスに関する国際会議での報告を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外旅費が想定より安価でおさまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の支出(主に旅費)にて調整する。
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