研究課題/領域番号 |
15K03343
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
クロス 京子 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (40734645)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移行期正義 / 社会正義 / アチェ / 真実和解委員会 / イスラム法 / 安全保障と女性 |
研究実績の概要 |
本研究目的は、移行期正義の枠組みにおいて、社会的・経済的正義がいかに施策として志向されるのかを事例研究を通して明らかにすることである。研究2年目の2016年度は、インドネシアのアチェの事例研究を中心に文献調査・現地調査を行った。具体的には、和平合意後の同自治州の政治・経済状況を二次文献を中心に収集し、現在の移行期正義の課題の洗い出し作業を行った。そして2017年2月にアチェ自治州の州都バンダイ・アチェで現地調査を行った。 アチェは和平合意から10年が過ぎ、政治状況は比較的安定していることから、紛争が再発する可能性はほぼないと言える。しかし、武装解除によっても自由アチェ運動(GAM)の指令系統は解体されることなく、GAMの指導者層は政治エリートとして利権を享受し腐敗が進んだ。他方で、末端の戦闘員の生活状況はこの10年間で大きく改善されているとは言えない。特に女性戦闘員の生活苦の状況が聞き取り調査で明らかになった。こうした不満は政治的に利用され、イスラム法による厳罰化が進んだという意見が現地研究者らへの聞き取り調査で得られた。また、和平合意で約束された「真実和解委員会」の設置が、2016年に入って州レベルで決定されたが、選出された委員や関係者へのインタビューでは、和解が未達成に終わっているとの主張が見受けられた。しかし、実際の被害者への救済については、具体的な解決策が見いだせていない現状が明らかになった。 2016年度の現地調査の実施が年度末にずれ込んだことから、研究2年目の調査結果は未発表である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画では、初年度がアチェ、2年目がミンダナオに集中的に取り組む予定であったが、昨年度ミンダナオ紛争の事例を取り上げた関係から、2016年度はアチェの事例研究を行った。現地調査のタイミングは、州政府の真実和解委員会の設置は昨年度から計画されていたが、選挙や財源の問題によって、委員の選出など具体的な制度設計発表がずれこんでしまった。したがって、いまだ論文として公刊するに至っていない。また、ミンダナオの事例のフォローアップとして、ミンダナオ和平関係者を招いてセミナーを行う予定であったが、諸事情により来日が実現しなかった。研究成果をまとめるには、まだ十分な資料が収集できておらず、こちらも研究計画から遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、秋に予定されているアチェの真実和解委員会の公聴会に参加し、関係者に聞き取り調査を行う。また、ミンダナオについては、ドゥテルテ大統領の和平プロセスに対する方針が明らかになったことから、現地関係者との聞き取りも進めやすくなることが期待できる。研究最終年度であるため、年度末には論文にまとめる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ミンダナオ、及びアチェで計画していた現地調査の計画がずれ込んだことが大きい理由である。また、関係者を招いてシンポジウムを行う予定であったが、現地政治状況の影響による理由で来日がキャンセルされてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は現地調査を複数回行うのに加えて、研究発表のために海外での学会報告を行う予定である。
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