研究課題/領域番号 |
15K03343
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
クロス 京子 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (40734645)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 移行期正義 / 社会正義 / アチェ / 真実和解委員会 / ミンダナオ紛争 / イスラム法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、移行期正義の枠組みにおいて、社会的・経済的正義がいかに施策として実施され得るのかを、事例研究を通して明らかにするものである。研究3年目の2017年度は、予定していた現地調査を行えなかったため、二次文献や各種団体の報告書、新聞等の資料を用いて、フィリピン及びアチェの移行期正義の動向とともに、政治環境の変化を追った。 政治環境の変化を追うには理由がある。まず、インドネシアのアチェであるが、2017年2月に自治州で選挙があり、新しい知事のもと、真実和解委員会の実施計画が宙に浮いている。前知事が推進した計画では、重大犯罪以外の比較的軽微な犯罪を扱うことを決めたが、参加する被害者にまとまった額の救済措置を取る方針が取られており、新知事の方針と乖離がある。 また、フィリピンのミンダナオ島では、イスラム国に関係するイスラム過激派と政府軍との戦闘が起こり、ミンダナオ全土に戒厳令が敷かれた。イスラム教徒の原住民がリフィリピンからの分離独立を求めていた旧い戦争から、対テロ戦争という新しい戦争へと、紛争の本質が変わりつつある。この点については、ミンダナオのイスラム過激派の動向に詳しい研究者を招聘し、研究会を開催した。研究会では、独立闘争の主流派から分離した過激派が、イスラム国などのグローバルなテロ組織に組み込まれている事実が紹介された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究業績の概要でも述べたが、現地調査を行うインドネシアのアチェと、フィリピンのミンダナオの政治状況が変化し、予定していた調査を遂行できなかった。アチェについては、2017年2月の選挙によって当選した新知事の真実委員会実施方針が、前知事と異なっており、議会で再度審議されるなど、計画自体が宙に浮いている。 ミンダナオについては、イスラム過激派のテロに続き、政府軍の掃討作戦が展開されるなど、治安状況が悪く渡航できる状態ではなかった。
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今後の研究の推進方策 |
インドネシアのアチェについては、現地協力者から計画が前に進む見通しがもたらされている。ただし、公聴会が開かれない場合を考慮して、紛争被害・加害者である女性の社会的・経済的地位の向上を支援している団体に焦点を移すことも選択肢として取っておく。 ミンダナオについては、戒厳令が解除され、安全が確保される状態になれば渡航したいと考えている。難しい場合は、マニラ大学にあるイスラム民主主義ネットワークを訪れ、イスラム法の普及と土地問題について、同団体が実施した活動の聞き取りを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究3年目の2017年度では、インドネシアのアチェと、フリィピンのミンダナオで現地調査を行う予定であったが、政治・治安状況が変化し、現地調査を取りやめた。今年度は、引き続き同地域での現地調査を各1回行う計画であるが、困難な場合は対象、および現地調査の場所を変更し調査を行う計画である。
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