最終年度は、それまでの年度における史料調査に基づき、順調に著書原稿執筆を継続したものの、執行予定であったロシアでの史料調査は、あてにしていた研究ガイドの母の病気、そして申請者の研究準備不足のために、執行することができなかった。著書原稿の方は、2~300頁も書くことができ、2019年度中に、その一部を紀要論文に掲載することが決まったほどに、順調な研究ぶりであった。紀要論文では、これまで研究が進んでこなかった米国軍部内での冷戦開始へのプロセスと彼らの冷戦観を明らかにできると考えている。もちろんこれだけでなく、近々に著書出版に向けて、出版社とのコンタクトを始めるつもりである。他方、ロシア史料調査は難航した。申請者が回覧を期待をしていた、スターリンの日々の政策決定基礎である、共産党内部の対外政策立案文書は、結局、最終年度まで解禁されることはなかった。そのためソ連軍史料を回覧する計画を立てたが、出発前に、あてにしていた研究ガイドの私事ゆえに、執行が困難になった。申請者のロシア語力からして、史料回覧に関する交渉を成功裏に行うことには無理であるので、あきらめることとした。また他の執行可能性として、米国陸軍長官のヘンリー・スチムソン日記を購入することを考慮したが、関西学院大学図書館がこれを購入することになり、科研費での購入は不要となった。そのため多くの資金を使用せずに残すことになったが、研究自体は他の形で明確に進歩したと言い得る。実際に、同大学図書館で、これを使用しての研究を現在も継続している。
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