研究課題/領域番号 |
15K03350
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研究機関 | 財務省財務総合政策研究所(総務研究部) |
研究代表者 |
楡井 誠 財務省財務総合政策研究所(総務研究部), その他部局等, その他 (60530079)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 物価上昇率 / 内生的景気循環理論 |
研究実績の概要 |
本研究は、内生的景気循環モデルを拡張することにより、(1)マクロ諸変数の自己相関係数の決定、(2)金融政策効果の推計、(3)物価上昇率の平均と分散の正相関について明らかにすることを目的としている。また、解明すべき問題の性質に応じて、景気循環のその他の要素である資産市場における振動や異質的家計の分布などにもモデルを拡張する。これらの拡張によって、従来理論では取り扱うのが困難とされていた景気循環の内発的要因が実証的にも重要な役割を果たしていることを示し、安定化政策の効果発現メカニズムと厚生的帰結の分析に貢献する。 本研究の目的のうち最も新規性の高いのは上記(3)である。平成27年度は、(3)のモデルを開発するために、Nirei(2015)の内生的景気循環モデルを連続時間モデルとして再定式化し、財の粘着的価格付けを導入することに注力した。物価上昇率については、高インフレ率の領域において、その平均的レベル(インフレ率時系列の平均)と振動(インフレ率時系列の分散)の間に正相関があることが知られている。この相関関係の解釈をめぐり、価格硬直性が価格調整コストの存在によるとする学説と情報の非対称性による説が並存している。本研究では、価格付けの離散行動に、離散行動が引き起こすマクロ的振動の数理を応用することにより、平均と振動の正相関を説明する。平成27年度は基本モデルの開発に専念し、モデルの素描と定常均衡存在の数値的確認、内生的振動が発生することの解析的証明と数値的例示、および物価上昇率の平均と分散の正相関のモデル上の再現という結果を得た。粘着的価格は、標準的なカルボ価格付けモデルと状態依存価格付けモデルの両側面を盛り込むことができた。また、異質的家計の所得分布についても研究を進め、査読論文の公刊に結実した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的(1)にあげた、景気循環におけるマクロ主要変数の自己相関係数の決定については、当初予期したメカニズムではうまく説明できないことがわかった。そこで、目的(3)に直接挑戦することにした。モデルの連続時間上での再定式化について、当初の想定通りにできることがわかり、物価上昇率の平均と分散の正相関を説明するモデルの構築まで進捗することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に開発したモデルと分析結果は、平成28年7月の東京大学でのセミナーにて発表する予定である。その後論文の完成度を高め、平成28年度末に海外主要学会の口頭発表に応募したい。また、目的(1)自己相関係数の決定と目的(2)金融政策のモデルへの導入についても検討を続けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の物品費として利用するため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度物品費に使用する予定。
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