研究課題/領域番号 |
15K03350
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研究機関 | 財務省財務総合政策研究所(研究部) |
研究代表者 |
楡井 誠 財務省財務総合政策研究所(研究部), 研究部, 総括主任研究官 (60530079)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 内生的景気循環 / 物価の安定性 / 資産市場の安定性 / 資産・所得分布 / 異質的動学一般均衡モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、内生的景気循環モデルを資産市場振動や異質的家計分布などに拡張しながら、物価上昇率の平均と分散の正相関について明らかにすることを目的としている。平成28年度は、前年度に開発したモデルを精緻化し、比較静学解析を充実させた草稿をまとめた上で、東京大学ミクロ経済学ワークショップや小樽商科大学におけるSWETなどで論文報告を行った。そのときに得たコメントを活用して、年度末までに論文本体をほぼ完成させることができた。この成果を29年度6月の日本経済学会における招待講演で報告するとともに、年度内に海外の有力な報告媒体へ投稿することを予定している。 28年度は、関連するその他の研究においても進捗があった。一つには、内生的景気循環モデルを応用して資産価格のベキ乗則的振動パターンを説明した論文を、エコノメトリックソサエティアジア大会と、京都大学数理解析研究所やニース大学で開催されたワークショップにおいて報告し、貴重なコメントを得た。また、異質的家計の資産分布に取り組んだ研究が、昨年度に続いて有力誌に採録、公刊された。また、資産格差とバブルが経済成長にもたらす影響の相互連関を論じた共同研究が進展し、アメリカ経済学会年次大会への投稿に達した。異質的家計の消費行動が起こす消費循環を分析した論文も査読誌に公刊された。サプライチェーン上に分布する企業に起こった生産性ショックが伝播する様態を実証的に推定した論文は、NBER Summer Instituteで報告された後、Quarterly Journal of Economicsからrevise and resubmitを招待された。最後に本研究課題との関連は密接ではないものの、企業生産性ショックのマクロ経済への影響分析の一環として、シェアリング技術の伝播がマクロ経済にもたらす付加価値を実証分析した研究が、28年度ASSA報告論文に採録された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物価上昇率の平均と分散の正相関について、モデル分析がほぼ完成した。この論文自体を29年夏から冬にかけて海外国際学会で報告するには投稿が間に合わなかったものの、関連する他の研究論文の進捗が大きく、これらの論文を査読誌において公刊したり、海外学会へ投稿することなどを達成することができた。また、物価上昇率論文のモデル分析が完成したため、本年6月に依頼されている日本経済学会の招待講演において、研究プログラム全体の中に位置づけながら本分析を報告することができるようになったと考えている。したがって、研究総体として順調に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため、物価上昇率の平均と分散の正相関を分析した論文("From Micro to Macro in Inflation Fluctuations")は確実に脱稿したい。また、本年度6月の日本経済学会講演を、本研究課題の取り組みを全体として公表する良い機会であるととらえて、質の高い講演論文を執筆したい。また、関連する研究論文についても査読誌への採録として結実することに全力をあげ、次期の研究課題の設定につなげたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の物品費として利用するため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度物品費に使用する予定。
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