研究課題/領域番号 |
15K03350
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
楡井 誠 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (60530079)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 物価の安定性 / 最適インフレ率 |
研究実績の概要 |
本研究は、内生的景気循環モデルを資産市場振動や異質的家計分布などに拡張しながら、物価上昇率の平均と分散の正相関について明らかにすることを目的としている。29年度は物価上昇率研究の理論解析を完成させることができた。この研究成果について、東北大学経済学研究科における現代経済学研究会(30年2月22日)や大阪大学社会経済研究所セミナー(30年1月24日)において報告し、参加者から貴重なコメントをいただくことができた。また、この研究で用いた自己組織臨界現象のマクロ経済学への応用の第一人者と意見交換する機会を得て(30年3月14日)、貴重なコメントと激励を受けた。一方、本研究プロジェクトで推進している研究の包括的な内容について、日本経済学会春季大会(6月24日、立命館大学)にて招待講演として、またキヤノングローバル戦略研究所「経済・社会への分野横断的研究会」(9月26日)や Osaka Workshop on Economics of Institutions and Organizations(平成30年2月20日、東京大学社会科学研究所)にて紹介する機会を得た。 その他、関連する家計資産分布論文と設備投資循環論文が公刊された。また、企業の知識資本償却率に影響するようなイノベーション競争の経済厚生に対する影響を企業データと株式市場データを用いて実証的に考察した論文について、Society for Economic Measurement(7月26-28日、マサチューセッツ工科大学)、Asia KLEMSコンファレンス(7月31日、一橋大学)、Asia-Pacific Innovation Conference(11月2日、University of Victoria)にて共同研究者とともに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所期の目標である物価水準と物価振動率の相関を導く結果を得て、その理論を十分に精緻化することができた。その成果をいくつかの研究会や学会の第一人者に報告し、好意的な評価を得た。また、関連する研究についても公刊やコンファレンス報告を数多く達成することができた。29年度の研究代表者の異動に伴う他の研究業務の影響を受けて、本プロジェクトのメイン研究である物価論文の公刊については30年度以降に持ち越されることになったが、研究自体の進捗としては想定通りのタイミングで進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の理由により本プロジェクトの補助期間の延長措置を受けたので、30年度中に論文を確定して公刊する予定である。その公刊を待った上で、日本経済学会大会講演論文についても最終稿を確定して公表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の29年度異動に伴い、本プロジェクト以外の研究業務が発生し、本プロジェクトの進捗が夏季にやや遅滞した。その後、本プロジェクトのメイン論文の完成に尽力し、所期の目標である物価水準と物価振動率の相関を導く結果を得たが、もう一歩進めて最適インフレ率まで論じる方が論文の完成度が高くなると判断し、研究計画の延長を申請した。しかし、年度末に本研究分野の第一人者とこの論文について意見交換した結果、最適インフレ率まで論じる代わりに、現在の研究結果をさらに精緻にした方が良いとのアドバイスを得た。30年度はその方針で論文を公刊する予定である。次年度使用額については、公刊に必要な論文投稿料や英文校正費用に当てるとともに、先述の研究者とさらに意見交換するための出張費用に当てる予定である。
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