研究実績の概要 |
29年度は28年度からの継続研究を含め、次のようなプロジェクトを行った。これまでの主観確率の導出とは異なる設定から出発し、単調性と呼ばれる自然な公理を強化する形で主観確率が導出できることを示した。このアプローチを使うと、先行研究で行われていない二段階期待効用というクラスの公理化を行うことができることが分かった。現在、得られた研究成果をまとめた論文の草稿を作成中である。新しいプロジェクトとして、主観的情報構造の内生的選択の公理化にも取り組んでいる。情報構造の費用は私的情報であるため、情報構造は主観的最適化の解と想定されるべきである。このモデルは、初年度に取り組んだ基礎研究の一般化と考えることができる。28年度から継続しているBoston UniversityのJawwad Noor氏との主観的情報構造の内生的導出に関する研究(認知的コストを考慮した時間選好率の理論)は、独立した科研費プロジェクトとして、30年度から引き続き実施することになっている。
28年度に実施した意思決定理論の国際ワークショップを引き継ぐ形で、国内の他大学研究者などと連携し、定例化された意思決定理論の研究会, Decision Theory Workshopを立ち上げた。29年度は、5月に一橋大学にて2件の報告を含む研究会、10月に岩手県立大学にて5件の報告を含む研究会を実施した。どちらの研究会にも多くの大学から研究者・院生を含め20名ほどの参加者があり、活発な意見交換が行われた。
意思決定理論の主要な国際研究会であるRisk, Uncertainty, and Decision 2017 (London Business Schoolで開催)にて、主観確率の導出についての研究報告を行った。また、上記のDecision Theory Workshop (岩手県立大学で開催)でも研究報告を行った。
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