研究実績の概要 |
今年度は,エージェントが成功リスクの程度を選択できる動学シグナリングモデルにおいて,イノベーションの価値を最大にする補助金スキームに関する理論的な考察を行った.この分析では,イノベーションの価値を最大にするためには,比較的価値の低い漸進的なイノベーションに補助金を与えることが多くの場合で最適であるというや逆説的な結果を示した.ここで得られた結果は,創出したイノベーションの価値とそれに対応した報酬の間で現実によく観察される"reward compression"に対応していると考えられ,一見すると非効率なreward compressionが実際は経済厚生を大きく改善する可能性があることを示唆している.この成果はディスカッションペーパー(Chen and Ishida, 2017, "Rewarding Mediocrity? Optimal Regulation of R&D Markets with Reputation Concerns")として公表し,今後は研究会や国際コンファレンス等での報告を経た後,国際学術誌に投稿する予定である.
この他にも昨年度に公表した研究("A Tenure-Clock Problem"および"Hierarchical Experimentation")についても,各種研究会やコンファレンスでの報告や同分野の研究者との意見交換を踏まえて改訂作業を行った.これらの研究についても継続的に改訂を行い国際学術誌の掲載を目指す.
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