このプロジェクトは、元々、サーチ理論の国際コンファレンスを福岡で開催するというのが眼目である。国際コンファレンスは平成17年度末(2018年3月)に行ったが、平成18年度は研究費の残金を今後の研究基盤整備にもっぱら使用した。具体的には、ワークステーションを購入し、モデルの数値計算の加速化を行うとともに、従前書き溜めた草稿で用いられた計算の、新しいソフトウェアでの再計算を進めた。近年の経済学では、モデルをreduced formで解くことにこだわらず、様々な要素を盛り込んだリッチな設定で、様々なシミュレーションを行うことが流行となっている。再計算に持ち込まれた現在進行中のプロジェクトは次の通りである。 (1)Tax Wedge and Job Distribution with Directed Search:これは所得課税や社会保険料負担が、雇用の生産性分布にどのような影響を与えるか、分析するもの。 (2) Insurance and Demand for Medical Care:これは健康保険制度の現物供給が、病院、医院、製薬会社など医療供給者に価格引き上げのインセンティブを与える問題をサーチ理論で定式化するプロジェクト。 (3) A Search Model of Bestsellers:サーチ理論は、書籍や、音楽や演劇など舞台興行のように、一部の人しか興味持たず供給情報がつたわりづらいサービスの市場の分析に役立つ。 (4)A Search Model of Resale:これは転売市場の基礎モデル。9年前に初稿を書いたが、消費者の選好の異質性を含む一般モデルを計算することが難しく、これまで放置されていたもの。ワークステーションを活用し、完成を加速中。
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