平成29年度は、二地域による公共財供給が地域間交渉を通して実現する状況において、中央政府の公共財供給への補助金制度が、地域の代表者選出に与える影響について分析した。この交渉は、各地域の代表者(議員など)によって行われ、代表者は、地域の住民から投票により選出される。既存研究では、代表者選出の過程で発生する戦略的誘因により、交渉の帰結はパレート非効率になることが知られているが、地域間交渉に先んじて、中央政府が、補助金政策の実施をコミットすることで、非効率な資源配分を解消することができるか、が検証課題となる。 本研究の主要な成果は、中央政府が、各地域が公共財から享受する便益の情報を持ち、それを補助金政策の設計に利用したとしても、代表者選出の投票で発生する戦略的誘因は除去できず、その結果、パレート効率な公共財供給は実現するとは限らないことである。また、中央政府が、補助金政策を実施することに加えて、交渉決裂後に、各地域に代表者の再選出を促すことを併せて行えば、公共財の効率供給を実現することが可能であることも、明らかとなった。 現実のスピルオーバーを伴う公共事業の実施について、地域間費用分担は、中央政府の補助金政策を通して間接的に行われるものと、地方政府の間で交渉し直接的に行われるものの、二種類の方法が考えられうる。本研究の成果により、効率的な資源配分の実現のためには、補助金政策による介入のみならず、上記の再選挙制度を伴う費用分担交渉メカニズムを設計し併用するなど、中央政府による、これまで以上に強い介入が必要であることが示唆される。 これらの成果は、論文``Interregional negotiations and strategic delegation under government subsidy schemes"としてまとめ、国際学会において報告し、SSRNにて公開している。
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