Shinagawa and Inoue(2016)""R & D-Based Growth Model with Nominal Wage Stickiness"で展開した「長期的な貨幣成長の低迷がデフレ不況だけでなく、長期的な経済成長の低迷にも繋がる」という理論によって日本経済の衰退を説明できるか否か研究を進めた。 その研究の一端は、2022年12月出版の『メタバースと経済の未来』という著作の第7章で示されている。そこでは、日本人の知的好奇心や科学技術力の低下は、長期的なデフレ不況によって醸成されたデフレマインドが原因の一つになっていると議論されている。また、これまでのマクロ経済学は需要要因と供給要因に分割されているが、両者をつなぐカギとなるのがデフレマインドであると説明されている。 この内容は2023年3月に行った「反緊縮論と高圧経済論──お金のバラマキで日本経済は成長するか?」【夜の井上ゼミ #1】というネット配信でさらに詳しく議論した。「高圧経済論」を需要要因と供給要因をつなぐ「ミッシングリンク」(失われた環)として位置づけ、Shinagawa and Inoue(2016)をその理論的な論文として紹介し、その上で「バブル崩壊後の貨幣成長の低迷が消費需要不足とデフレ不況をもたらし、デフレマインドの醸成によって、設備投資、人材投資、研究開発投資の三つが減少し、労働生産性が伸び悩んだ」と論じた。 2023年7月にはさらに膨らませた内容を、「景気循環学会 高圧経済研究部会」で発表し、2023年中に著書としてまとめる予定である。 2022年度も、本研究は体調不良であまり進まなかった。
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