研究実績の概要 |
以下の論文を執筆し、研究会での発表と専門誌への投稿をした: Bank as a safe haven for investors: interest rates, regulations, and interbank markets 現代の投資銀行を中心とする大型銀行(以下、銀行)は機関投資家からの実質的な短期資金を預金として借り換え続けることによって、証券などの金融資産に投資を行っている。機関投資家は預金保険の対象外であることから、銀行が保有する証券価格の変動が預金の安全性を脅かす場合、銀行から資金を引き出してより安全性の高い資産に投資するインセンティブがある。実際、2007年から2009年にかけての金融危機では、証券価格の急落に伴う機関投資家の預金引き出しがその引き金を引いたことが観察されている。このことは、金融ショックのもとで銀行システムの安定性を確保するためには、機関投資家からの預金の安全性を確保することが重要であることを示唆する。 本論文では、外生的な金融ショックによって、銀行が投資する証券の価格が急落する可能性がある経済状況のもとで、安定的に機関投資家からの預金を調達するための銀行の意思決定を契約理論に基づく3期モデルで分析を行った。期首に銀行には資産に投資する機会があるが、期中に発生する金融ショックによって一定の確率で資産に対して再投資のための流動性需要が発生するので、銀行は事後的に銀行間市場を形成して事前に保有する流動性を再分配することが望ましい。しかしながら、銀行の目的が内部株主の期待利得の最大化である場合、銀行間市場取引にはなんらかの規制がなければ預金の安全性を確保できない。 主要な結果として、銀行間金利に対する一定の上限と、自己資本および流動資産保有比率に対する規制の組み合わせによって、銀行が銀行間市場を通じて自発的に預金の安全性を確保できることを導出した。
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