研究課題/領域番号 |
15K03372
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
中川 竜一 関西大学, 経済学部, 教授 (60309614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 適応的学習 / 期待の異質性 / 均衡の安定性 / 金融政策のあり方 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人々が適応的学習によって期待形成するとき、マクロ経済の安定性および金融政策の有効性がどのような影響を受けるかを明らかにすることである。平成28年度は、交付申請書「研究目的 テーマⅡ、Ⅲ」について分析すると同時に、関連研究の研究成果を国内外に発表することに取り組んだ。 第1に、「研究目的 テーマⅡ」として、人々の適応的学習に異質性を導入し、学習の異質性がマクロ経済の安定性および金融政策の有効性に与える影響を明らかにした。具体的には、学習の異質性を分析したNakagawa(2010, 2014)モデルをベースとして、学習の異質性がサンスポット均衡の安定性を高めることを明らかにした。 第2に、「研究目的 テーマⅢ」として、テーマⅡの結果を金融マクロ経済モデル(New Keyensianモデル)に応用し、サンスポット均衡の発生を抑えるための金融政策のあり方を明らかにした。そして、学習の異質性が存在するとき、金融政策のあり方に強い制約条件が課されることを明らかにした。 これらの研究を進めるため、平成28年7月から平成29年3月まで英国London School of Economicsに研究留学した。このとき、研究方法を再検討すると同時に、外国研究者と直接的に交流し、将来の共同研究について打ち合わせすることができた。それぞれの研究成果を国際経済学会(Midwest Macro Meetings、European Economic Association)において発表し、テーマⅡの研究に関する論文を所属機関のワーキングペーパー(Economic Society of Kansai University Working Paper Series)に公刊した(McGough, Nakagawa, 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書「研究目的 テーマⅡ」については、当初の計画通り、平成28年度に研究論文の執筆、国際経済学会での発表をおこなった。 さらに、当初の計画では平成29年度に研究する予定であった「研究目的 テーマⅢ」の研究を平成28年度に繰り上げっておこなった。研究を繰り上げることができた理由は、平成28年7月から平成29年3月まで英国London School of Economicsに留学し、集中的に研究活動を進めたためである。 そのため、「研究目的」の達成は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、平成28年度までに分析したモデルに金融市場の不完全性を導入し、資金の貸し手と借り手の間に学習の異質性が存在する経済を分析する。そして、金融市場の不完全性が異質の学習を通じて均衡の安定性、金融政策の条件に与える影響を明らかにする(「研究目的 テーマⅣ」)。ここでは、適応的学習における金融市場の不完全性を分析したAssenza, Berardi (2009) モデルをベースとする。
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