本研究では、近年の景気変動分析で頻繁に用いられているニューケインジアン動学的一般均衡モデルに、将来に関する期待の外生的変化と研究開発を基礎とした内生的技術変化を組み込んだ理論モデルを構築することで、日本経済の短・中期的な経済変動の定量的な分析を行うことを目的としている。2017年度の研究実績は以下の2点である。 第1点目の実績は、2016年度までに構築した理論モデルに修正・改良を加え、モデル構築を完了したことである。具合的には、ニュースショック(期待の変化)を組み込みこんだことで、内生的技術、インフレ率、名目利子率などにニュースショックが与える影響を定量的に分析できるようになった。 第2点目の実績は、ベイジアン手法を用いて完成したモデルの構造推計を行い、推計されたモデルを基礎にしたシミュレーション分析(モンテカルロ分析)を行った。シミュレーション分析により、通常のニューケインジアン動学的一般均衡モデルでは説明が難しい、一時的なショックによる幾つかの重要なマクロ経済変数への持続的(中期的)影響を説明することが可能となった。具体的には、インフレ率の持続性、インフレ率と名目利子率に対するニュースショックの負の持続的影響、全要素生産性(技術水準)に対する需要ショックの持続的影響を説明することができた。特に、インフレに関する研究成果は、物価の安定を重要な目的の一つとする中央銀行の政策効果を議論する上で、重要な発見となりえる。
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