研究課題
最終年度にあたる平成29年度では、イスラム銀行が陥っている「ムラバハ症候群」の実態を、アジアにおけるムスリム国(インドネシア、マレーシア、バングラデシュ、パキスタン)のケーススタディにより明らかにし、加えて、湾岸諸国のケーススタディも取り上げることにより、国ごとのイスラム銀行の収益性および安定性について、広範囲に亘る比較分析を行うことができた。特に、政府・中央銀行の政策により、競合する普通銀行と競争できるようになるための「学習レント」機会を捕捉できたマレーシアやバーレーンのイスラム銀行が、普通銀行同様の収益性と安定性を確保できているのに比べ、そうしたレント捕捉機会がないまま、競争に晒されたインドネシアのイスラム銀行が、収益性と安定性を確保できず、同国におけるイスラム銀行による金融浸透度が著しく低い状況に陥っていることを、実態分析にて明らかにすることができた。この研究成果については、平成29年8月に、インドネシア大学主催の国際学会およびマレーシアの先端イスラム学研究所において、発表し、現地研究者との意見交換も行うことができた。この研究成果については(特に、ムラバハ症候群に対する安易な批判に対する批評、及びイスラム金融において禁止される「過度な不確実性」(ガラール)を巡る分析について)、Routledge社から出版した編書「Dilemmas and Challenges in Islamic Finance」のBook Chapterとして出版することができた。今後は、イスラムバンクレント(イスラム銀行が捕捉する収益機会)概念をさらに精緻化するとともに、その収益機会がどのようにイスラム銀行のリスクマネジメント向上に繋がっているのか、監督官庁によるガバナンスの問題も含め、展開していくことを計画している。
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Journal of Islamic Accounting and Business Research
巻: Vol. 9, Issue 3 ページ: -
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