研究課題/領域番号 |
15K03380
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
瀬尾 崇 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (60579613)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 国民的イノベーション・システム / システム・ダイナミクス / シュンペーター / 景気循環論 / 貨幣論 / 知識 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,「研究の目的」で挙げている「理論的・統計的および制度論的再構築」のうち,「理論的」側面の研究に対して2つの成果をあげることができた。 その一つとして,現代の長期波動を,情報と知識を基盤技術とするものと位置づけたうえで,概念的・分析枠組みとしてのNational Innovation Systemをモデル化し,モデル構築支援ソフトのSTELLAを用いて,知識のフローとストックの時間を通じた挙動を分析した。研究成果のアウトプットは,(1) The 16th ISS Conference (2016.07.06-08, Montreal: Canada),(2) 第22回制度的経済動学セミナー (2016.08.22, 京都大学) で口頭報告をおこない,Proceedingsを加筆・修正したうえで査読つき海外ジャーナルの投稿論文としてとりまとめている(現在審査中)。 成果の二つ目は,理論的研究を補完する,シュンペーターの貨幣論の検討に着手したことである。これは次年度に一定のまとまった成果をあげるための準備段階にあたるものである。その基礎となる先行研究のフォローをおこない,(1) The 2nd International Seminar on Political Economy in Toyama (2016.10.02-03) および (2) 進化経済学会第21回京都大会 (2017.03.25-26, 京都大学) で口頭報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」理由としては,海外学会報告(それに関連した海外研究者との交流)を1つこなせなかったこと,そして,海外報告で提出したproceedingsの査読つき海外雑誌に「掲載決定」まで至らなかったこと,以上の2点が挙げられる。 前者に関して,平成27年度から持ち越していた海外学会報告については,これとは別に本来予定していた海外学会報告(The 16th ISS Conference)が,本研究課題にとって研究領域として最もフィットした学会報告であったことと,それ以上にこの国際学会では,同じ分析ツールを用いて研究しているブラジルの研究者と共同研究および共同論文の執筆に関する相談までできたため,追加でもう一つ海外学会報告をこなすこと以上の収穫があったと考えている。最終年度にあたる平成29年度に本研究課題の総括として研究成果をアウトプットすべく,本来予定している1つの海外学会報告に加えて再度持ち越したい。 後者に関しては,現在2つの論文が査読つき海外雑誌で査読プロセスの途中にあり,これらは平成29年度中に「掲載決定」まで持っていく予定である。 平成27年度の成果報告でも「やや遅れている」と判断したが,その持ち越された遅れは平成28年度において,若干カバーすることができたと考えている。最終年度において完全に残りの遅れを完全にカバーしたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年度にあたるため,研究計画の工程表を再確認したうえで,最終的な総括まで到達したい。 まず,本研究課題で掲げている「理論的・統計的および制度論的再検討」のうち,シュンペーターの景気循環論を「理論的」に補完するのに不可欠な要素である,貨幣・信用論に関しては,前年度(平成28年度)の後半から研究に着手することができていたため,本年度すでに2017年5月18-20日に開催されるESHET (European Society for the History of Economic Thought) Conference 2017で海外学会報告(査読つき)にアクセプトされ口頭報告が決定している。さらにそこでのproceedingsをもとに早急に査読つき雑誌への投稿を完了させたい。 次に「制度論的」研究に関しては,本研究課題の申請時にすでに執筆していたDiscussion Paperが2本あるため,それらを改訂するかたちで総括の水準にまで持っていく。それらは,2017年10月19-21日に開催予定の国際学会EAEPE (European Association for Evolutionary Political Economy) で口頭報告予定(2017年5月に報告申込)であり,その後,年度末までに査読つき英文ジャーナルへの投稿論文として修正・投稿まで完了させたい。 ただし,本研究は平成27年度の10月末に追加採択されたために,万が一これまでのやや遅れている部分がカバーできない時は,平成30年度の開催予定のISS Conferenceでの口頭報告を持って研究が完了できるように研究期間の延長する可能性もある。もちろんそうならないように本年度の研究計画を実行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度から持ち越した国際学会への参加・報告について,本年度予定分は計画どおり実行できたが,前年度から持ち越した追加の1回分の実行がかなわなかった。さらに,査読つき国際雑誌への2本の論文について,英文校正費を支出予定であったが,年度をまたぐことになったため,次年度での支出となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の2017年5月に,すでに1つ国際学会報告が審査の結果受理されているため,本年度から持ち越した国際学会参加・報告分については2017年10月に開催予定の国際学会で支出予定である(ただし,2017年5月の報告審査の可否による)。 さらに,上記以外の英語論文を2本(うち1本は2017年5月の国際学会報告のproceedingsをベースにした修正稿)を予定しており,そこで英文校正費を支出する予定である。
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