研究課題
本研究課題の最終年度である平成30年度は,研究の目的で挙げた「理論的・統計的および制度論的再構築」のうち,特に「理論的」側面と「制度論的」側面との統合による再構築に関する研究成果を2つあげることができた。一つは,シュンペーターのイノベーションに基づく景気循環論を,システム・ダイナミクスの手法を用いて,理論的なモデル構築を行った。その成果は,平成30年7月2日~4日に韓国で開催されたThe 17th ISS Conference (Seoul National University) の口頭報告に採択され,Proceedingを執筆した。口頭報告での議論を経たProceedingのrevised versionが,現在,同学会の専門雑誌Journal of Evolutionary Economicsの査読プロセス中にある。本論文では,シュンペーターのイノベーションを資本主義経済システム内に位置づけるために,シュンペーターも大きく影響を受けたマルクスの二部門モデルに「知識部門」を追加する形で,いわば三部門からなる資本主義経済の理論モデルに拡張した。これをモデル構築支援ソフトSTELLAを用いて視覚的にモデル構築し,シミュレーションを実行して分析した。その重要な含意として,現代の知識ベース経済においては,知識の生成に関する制度設計に依存して経済システム全体の挙動が変動しうるという点を指摘ことができた。さらに,現代の日本の科学技術政策における科学的知識創出の具体的制度設計を上述のモデルにインプットし,政策的なインプリケーションを導出した。この成果は,平成30年9月6日~8日にフランスで開催されたThe 30th EAEPE Annual Conference (Saint-Jean d'Angely Campus) の口頭報告に採択され,Proceedingを執筆した。
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Discussion Paper (School of Economics, Faculty of Human and Social Sciences Kanazawa University)
巻: 45 ページ: 1-32